医療講演会参加報告

2017/6/4に糖尿病に関する医療講演会に参加してまいりました。

『DPP-4阻害薬の特性について考える』というのが、テーマです。

DPP-4阻害薬は 本邦の糖尿病患者さんの70%に処方されており、第一選択薬としての地位を確立しています。今回、ご紹介するトラゼンタを初めとして、テネリア、ネシーナ、ジャヌビア(グラクティブ)、エクア、スイニー、ザファテック、マリゼブなどがあります。

いずれの薬剤も食後の高血糖を抑える、血糖変動を抑える、単剤では低血糖をきたすことがない、多剤との併用がしやすい、副作用がほとんどなく安全性が極めて高い、特に日本人には効きやすいなど素晴らしい特性を有しています。

これらの薬剤は1日2回内服、1日1回内服、週に1回内服など利便性において差があります。

また、腎機能障害がある場合、肝機能障害がある場合に使用しにくい、いわゆる慎重投与、透析患者さんにおける禁忌など使用上の制限が異なります。

トラゼンタは肝腎での代謝経路が存在するため、これらの制限がない点で利便性が高いといえます。

これらの薬剤において治療効果や安全性の面において差があるのでしょうか?

食後血糖の低下作用、HbA1cの低下作用、安全性の面で差がないことが、様々な研究から明らかとなってきました。長期的な心血管病の抑制についても差はないとのことです。

次の演題はアクタキサンチンに関するものでした。アクタキサンチンは鮭の赤い身やエビの殻などに多く含まれており、ビタミンEの500倍の抗酸化作用があるといわれています。抗酸化作用とは簡単に言うといろいろなストレスから細胞を守り、動脈硬化や老化を防ぐ作用と理解していただくとよいと思います。

トラゼンタの基本構造がキサンチン骨格を有するため、抗酸化作用について優れているのではないかとの研究がなされています。

特にマクロファージという白血球による炎症を抑制する、GLP-1を上昇させる、血中・脂肪組織・肝臓においてDPP-4活性を抑制することにより、炎症を抑えインスリン抵抗性を改善すると分かってきました。

近年、関心が高まっている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の炎症・線維化を抑制し、肝硬変への移行や肝細胞がんの発症抑制にも寄与する可能性があります。

糖尿病とNASHは併発することが多いので、一石二鳥の有効な薬剤といえます。

高齢者では潜在的に腎機能が低下していることも多いので、高齢者にもトラゼンタは使用しやすい薬剤です。

肝機能・腎機能を気にすることなく、同じ容量で投与可能なトラゼンタは、高齢者の糖尿病が激増している本邦において今後、大きな役割を果たすであろうと期待されます。

上記の情報は前半は北海道大学の中村昭伸先生、後半は金沢大学の太田嗣人先生によるものです。

2017/6/4  ヒルトン東京お台場にて



 

糖尿病の最新情報

糖尿病治療の最新情報を発信しています。 

■週1回投与のDPP-4阻害薬『マリゼブ』が、長期処方解禁されました。

DPP‐4阻害薬は日本人に最も適した糖尿病治療薬と考えられています。

DPP‐4阻害薬の詳細については別に記載してありますが、血糖変動を抑えることにより、食後血糖スパイクを抑制し、長期的に大血管障害の発症を抑制することが期待されています。また、HbA1cを長期にわたり良好にコントロールできる、体重増多をきたさない、低血糖をきたしにくいなどの特徴があり、日本人には特によく効くと考えられています。
また、超高齢者が急激に増多している本邦において高齢者の糖尿病治療薬としても安全性の面から推奨できます。
『マリゼブ』は週に1回投与のDPP-4阻害薬であり、7日後も88%の活性が保たれています。
しかもその効果はすぐに表れることから超即効型でありかつ、超持続型の糖尿病治療薬です。
また、腎機能障害のある患者さんにも安全に使用可能で、重度腎障害の患者さんには半量に減量して投与することになっています。
透析患者さんにも半量で投与でき、透析の時間とは無関係に内服可能です。
週に1回の内服であり、飲み忘れた場合にはその時点で服用すれば問題ありません。

その効果は、空腹時血糖で20㎎/dlの低下、食後2時間で40㎎/dlの低下、HbA1cで0.6%の低下、多剤への併用でHbA1cを0.7-0.9%低下させます。

服用が楽で、副作用の心配も少ないこと、潜在的に腎機能の落ちている高齢者にも使用しやすいことより、今後の糖尿病治療の質の向上が期待できます。
2016年12月より長期処方が解禁されたため、今後、処方の機会が増えていくものと思われます。

2017/1/29



■持効型インスリン『ランタスXR』が好評です。

本来はインスリンを必要としない2型糖尿病であっても、少量のインスリンを追加することによりてきめんよくなる方がおられます。

このような場合には1日1回のインスリン治療が有効です。

持効型インスリンは1日1回のインスリン注射にて24時間にわたり、一定量の基礎インスリンを補充できるため、空腹時血糖を良好に維持できるのみでなく、空腹時の低血糖を生じることなく、食後の高血糖をコントロールできるようになります。単独で用いることはなく、経口薬を内服中の方に、内服を継続したままでインスリンを追加することにより、血糖変動レベルを均等に落とすことが可能となります。この方法をBasal supported oral therapy(BOT療法)といいます。

従来から使用されてきた『ランタス』に対し、2016/9月から長期処方可能となった『ランタスXR』は3倍に濃縮されたインスリンで投与単位数は同じままで注入量が少なくてすみます。

ランタスには血中濃度の波があり、24時間目の効力がやや落ちてしまうという欠点がありました。朝に打つと翌朝には効きが悪くなり朝の空腹時血糖が高めになってしまいます。そのため、就寝前の注射が勧められています。

ランタスXRはよりフラットな血中濃度が維持できるため、どの時間帯に注射してもインスリン切れになるということがありません。
ランタスに比し空腹時血糖で15㎎/dlの低下が実現できたというデータがあります。HbA1cでは0.43%の低下が確認されています。そして、低血糖になることが少なくなったというのが、大きなメリットです

さらに、デバイスも著しく改良されており、注射するときの抵抗感がなく、打った感じがしないほどに楽にインスリン注射ができるようになりました。
当院ではすでに多くの方にランタスXRを処方しており、治療効果は良好で患者さんからの評価も大変好評です。

使用上の注意としてこれまでとの違いは、から打ちが3単位に変更されていることです。ところがデバイスには3のメモリがなくて、2と4の間に合わせて、から打ちをしなければなりません。本来は3のメモリをつけて色を変えるなどの工夫が必要だったと思います。メーカーにはさらなる改良を提案しております。

2016/12/23
 

■簡便で有効な糖尿病治療薬『イニシンク』が処方可能となりました
 
糖尿病治療薬の主役は本邦ではDPP-4阻害薬です。
一方、米国においてはビグアナイド剤が第1選択薬とされています。
『イニシンク』はこの2剤の合剤であり、商品名でいうとネシーナ25㎎とメトグルコ500㎎を1錠にまとめたものとなります。1日1回1錠の内服であり、非常に簡便です。
 

DPP-4阻害薬は食事後に血糖の上昇に応じてインスリンの分泌を促して、食後の高血糖をコントロールする働きがあります。また、グルカゴンという血糖を上昇させるホルモンの働きを抑制することにより、空腹時も含めて適度に血糖を調整する働きがあり、単独投与で低血糖をきたすことは、ほとんどありません。
 
ビグアナイド剤(メトホルミン・メトグルコ)は、肝臓からの糖新生を抑制する働きと、体組織のインスリン感受性を高める作用により筋組織や脂肪組織での糖の取り込み・利用を促進します。また、消化管からの糖吸収を抑制する働きもあります。さらにGLP-1の分泌を促進し、GLP-1の作用を増強します。食欲を抑える働きもあり、体重増多をきたしません。平均的に血糖変動を抑える働きがあり、低血糖をきたさないなど多くのメリットがあります。メトホルミンはこれまで250㎎を1日2-3回の低用量で使用されており、効果が不十分でしたが、1日に2,250㎎までの使用が認められてから、その効果が存分に発揮されるようになりました。
 
いずれの薬剤も血糖変動を少なくするのが特徴で両者を併用した場合、互いの長所をいかすことによって、より良い効果が発揮されます。
 
すでにご紹介したDPP-4阻害薬とビグアナイド剤の合剤の『エクメット』は、1日2回の内服となりますが、非常に有効です。
 
今回ご紹介する『イニシンク』は1日1回のDPP-4阻害薬である『ネシーナ』とメトホルミン500㎎の合剤であり1日1回の内服でよいのが大きなメリットです。
 
『イニシンク』はネシーナ25㎎を1日1錠、メトグルコ500㎎を1日1錠を処方したのと同じになり、薬剤費はネシーナ単剤と同額ですのでメトグルコの分の薬剤費がかからなくなります。メトグルコは500㎎では足りない感もありますが、治験の段階では単独投与に比し併用群ではHbA1cで0.5%の低下がみられています。ネシーナ単剤で効果がいまいちという患者さんには非常に良い適応と思います。
 
ビグアナイド剤(メトホルミン・メトグルコ)については肝障害、腎障害、アルコール多飲、脱水などで使用の制限がありますので、いわゆるシックデイには服薬を控えてください。
また、CTなどで造影剤を使用する際にも、前後2日間は休薬する必要があります。
狭心症やがんなどでしょっちゅう造影CTや心カテで造影剤を使用する場合は合剤でなく、別々に処方してもらっておいた方がよいでしょう
 
ネシーナ単剤であれば上記のような心配はありません。
DPP-4阻害薬が日本で好まれている理由は、以上のような面倒くささがなくて、非常に安全で、効果がよいからです。
 
一方、ビグアナイド剤は非常に安価であることが、米国で好まれている理由の一つに挙げられます。体重増多をきたさないことも大きなメリットです。
 
今後、処方経験をかさねることにより、イニシンクの有用性・治療効果が確立されていくと思われます。
 
2016/11/29


■週に1回のGLP-1製剤『トルリシティ』の有効性と簡便性

血糖のコントロールにはインクレチンという小腸から分泌されるホルモンが大きな役割をはたしています。
インクレチンの働きにより血糖が上がってきた時にインスリンの分泌を促し、血糖の上昇を抑えます。
また、グルカゴンという血糖を上昇させるホルモンの働きを抑えます。

また、胃に働き、胃内容の排出運動を抑えるため食後の急激な血糖上昇を抑制します。
さらに、脳にも働き食欲を低下させる作用があるので、食後の血糖上昇を抑え、体重増加を抑制できます。

このような効果をもつインクレチンですが、DPP4という酵素により数分で分解されてしまいます。
日本で汎用されているDPP4阻害薬はインクレチンの効果をながもちさせる薬です。

インクレチンにはGLP-1とGIPというものがあり、特にGLP-1は血糖コントロールに重要な働きを有しています。
GLP-1製剤とは注射薬ですが、GLP-1そのものを補充するため、DPP4阻害薬よりもはるかに有用です。
強力な作用といっても血糖が上昇しているときに作動するため低血糖の危険は少なく、安全性の高い薬です。

これまでは1日に1-2回の皮下注射による投与が必要でした。毎日の注射となるとインスリンと同じく大変面倒ですね。
しかし、インスリンのような低血糖の心配がなく、体重が減るのは大きなメリットです。
インスリンは血糖を強力に低下させますが、空腹時にも作用してしまうため、投与法の調整をあやまると低血糖になります。
また、血糖を下げるので食欲が増すため、食事制限ができていないと、体重が増えてしまいます。

今回ご紹介する『トルリシティ』は週に1回の皮下注射にて効果が得られるため、大変使いやすくなりました。
しかも、そのデバイスが非常に使いやすいのです。
筒のような器具をお腹にあてて、ボタンを押せばかってに針がでてきて、薬が注入されます。
自分で刺すという恐怖感がなく、注射したことすらわからないくらいに痛みもありません。
このデバイスの名前は『アテオス』といいます。まさしく、あてておすだけです。

当院での治療継続率は非常に良好です。
インスリンを用いても血糖コントロールが困難だった方たちが、
非常によくコントロールされており、抜群の治療効果が確認されています。

複数の内服薬を服用してもいまいちコントロールが不十分な方には、ててもよい適応となるでしょう。
単独投与もできますが内服薬やインスリンとの併用でさらに良い効果が得られます。

『トルリシティ』は私が自信をもってお勧めできる糖尿病治療薬です。

2016/10/19

■糖尿病治療薬のゴールデンコンビ『エクメットHD』

糖尿病治療薬の主役は本邦ではDPP-4阻害薬です。
一方、米国においてはビグアナイド剤が第1選択薬とされています。
 
DPP-4阻害薬は食事後に血糖の上昇に応じてインスリンの分泌を促して、食後の高血糖をコントロールする働きがあります。また、グルカゴンという血糖を上昇させるホルモンの働きを抑制することにより、空腹時も含めて適度に血糖を調整する働きがあり、単独投与で低血糖をきたすことは、ほとんどありません。
 
ビグアナイド剤(メトホルミン・メトグルコ)は、肝臓からの糖新生を抑制する働きと、体組織のインスリン感受性を高める作用により筋組織や脂肪組織での糖の取り込み・利用を促進します。また、消化管からの糖吸収を抑制する働きもあります。さらにGLP-1の分泌を促進し、GLP-1の作用を増強します。食欲を抑える働きもあり、体重増多をきたしません。平均的に血糖変動を抑える働きがあり、低血糖をきたさないなど多くのメリットがあります。メトホルミンはこれまで250㎎を1日2-3回の低用量で使用されており、効果が不十分でしたが、1日に2,250㎎までの使用が認められてから、その効果が存分に発揮されるようになりました。使用経験の少ない施設ではいまだに低用量の250㎎錠が使用されておりますが、それでは十分な効果は得られません。糖尿病を得意とする施設では1000-2000mg/日の処方が多いと思います
 
DPP-4阻害薬は多くは1日に1回の内服ですが、『エクア』は1日に2回の内服が必要とのことで、やや不利な状況にありました。ただし夕食後も内服できることにより夜間の血中濃度をより高く維持でき、特に夜間-早朝での高血糖を抑制できるというメリットもありました。
 
今回ご紹介する『エクメット』はエクメットHDでビグアナイド1000㎎/日、エクメットLDでビグアナイド500㎎/日を合剤として含んでおります。
 
当院ではエクメットHDを多くの方に処方しています。
エクメットHDを1日2錠で処方すればエクアを1日2錠、メトグルコ500㎎を1日2錠を処方したのと同じになり、薬剤費はエクア単剤と同額ですのでメトグルコの分の薬剤費がかからなくなります。
また、朝晩2錠ずつ飲んでいたものが1錠ずつですむのですから、これはとても楽です。

一日2回の内服は面倒なようですが、夜間-早朝の血糖コントロールに関しては有利に働きます。
 
DPP-4阻害薬とビグアナイドは、日本と米国のトップ同士の組み合わせで、まさしくゴールデンコンビです。しかも薬剤費が安くなり、飲む手間も楽になる、服薬の間違いも少なくなるでしょう。
 
ビグアナイド剤(メトグルコ)については肝障害、腎障害、アルコール多飲、脱水などで使用の制限がありますので、いわゆるシックデイには服薬を控えてください。
また、CTなどで造影剤を使用する際にも、前後2日間は休薬する必要があります。
がんや狭心症などでしょっちゅう造影CTと撮る方や心カテで造影剤を使用する場合は合剤でなく、別々に処方してもらっておいた方がよいでしょう
 
エクア単剤であれば上記のような心配はありません。
DPP-4阻害薬が日本で好まれている理由は、以上のような面倒くささがなくて、非常に安全で、効果がよいからです。
 
一方、ビグアナイド剤は非常に安価であることが、米国で好まれている理由の一つに挙げられます。体重増多をきたさないことも大きなメリットです。
 
今後、処方経験をかさねることにより、エクメットの有用性・治療効果が確立されていくと思われます。
糖尿病を得意としているクリニックでは、ビグアナイドは1日に1500㎎ないし2000mgの処方の方も多くおられます。
今後、エクメット1500ないしエクメット2000などの剤型がでてくるのではと期待しております。
 
2016/10/26


■SGLT2阻害薬について

糖尿病の画期的な新薬が登場しています。
血液中を流れる糖を尿中へと排泄してしまう薬で、1日に80gの糖、カロリーにすると350-400kcalのダイエットに相当します。ごはんにして1膳半ほどのダイエットに相当します。

尿糖の排出にともない、尿量が増える傾向にありますが、さほどではありません。

血糖では35-75mg/dlの低下が期待でき、ヘモグロビンA1c で1%、体重で3kgの減量が可能です。

他の経口糖尿病と併用しても同様の上乗せ効果が得られます。インスリンとの併用も可能です。

また、尿中のさまざまな老廃物を同時に 排泄するため、高血圧や高尿酸血症が改善するなど、
副次的な効果も得られます。

当院ではすでに茅ケ崎市内ではトップクラスの使用経験がありますが、継続率は非常に高く患者さんの満足度はとてもよいです。

特に大きな副作用はありませんが、尿糖がでるため膀胱炎を繰り返している方には不向きです。

また、高齢者では脱水になりことがあるので注意が必要です。処方しないほうが無難です。

肥満型で元気で過食傾向にある方が一番の適応です。

同系統の薬剤がほぼ同時に複数認可されておりますが、効果はほぼ同等です。

SGLT2阻害薬という範疇に属しており、薬剤名はカナグル、デベルザ、ルセフィー、スーグラ、ジャディアンス、フォシーガなどです。

もちろん食事療法、運動療法も頑張ってくださいね。

2016/10/3



 
■インクレチン療法について(DPP4阻害薬、GLP-1製剤)

『インクレチン療法』は新し近年、急速に進歩した糖尿病治療法です。
『インクレチン』とは腸管から分泌されるホルモンの総称で膵臓に作用してインスリン分泌を促進させる働きがあります。インクレチンは食事摂取とともに上昇し、インスリン分泌を促進し、血糖の上昇を抑えます。食事の摂取に伴い消化管から分泌されるインクレチンを増加させることにより、血糖が高い時はインスリンの分泌を促進し、同時に血糖を高める働きのあるグルカゴンの分泌を抑制することにより高血糖を抑えます。

少し、ややこしいですが、簡単にいうと血糖が上がると、下げる方向に働きますが、血糖値が高くないときは、無理に血糖を下げてしまうことはないということです。 
血糖値の上下変動により調整が働くということで、自然の形の血糖調整に非常に近いコントロールが可能なのです。
 
このインクレチンは非常に早く代謝されてしまうのですが、それを阻害するのがDPP4阻害薬なのです。(テネリア、ネシーナ、トラゼンタ、ジャヌビア、エクアなど)
1日1-2回の内服で食後の血糖上昇を抑える、空腹時血糖をコントロールする、強い空腹感をもたらすことはなく体重増加がない、低血糖、胃腸障害、肝障害などの副作用も少ないなど、すばらしい特徴をそなえ持っています。

また、血糖を上げる働きがあるグルカゴンの作用を抑制して、血糖上昇を抑制する作用もあります。

これらの働きを利用したのがインクレチン療法です。
本邦ではその安全性が高く評価され糖尿病の基本薬としての地位を得ています。また、食後の血糖のみが高いかくれ糖尿病には非常に良い適応と思われます。
最近では週1回製剤も処方可能となっており、利便性はますます増しております。(ザファティクなど)
 
また、インクレチンの主役であるGLP-1というホルモンと同様の働きをする薬でGLP-1受容体作動薬(ビクトーザ、トルリシティなど)も注目されています。

自己注射薬ですが、高濃度で直接作用のため、血糖に対する作用はさらに強力です。食欲を落とす作用と胃の運動を抑制して体重を下げる働きが加わるもの大きなメリットです。心臓、肺、腎臓、血管、骨、筋肉、脂肪組織などにもよい作用があることがわかってきています。自己注射の手間はありますが、食事の時間を気にすることなく、低血糖の危険もはるかに少ないなどメリットは格段に大きいです。現在は、週1回の製剤が処方可能となっており大変便利となりました。他剤への上乗せ効果は大変優れており、インスリンとの併用は効果抜群です。
当院では週1回製剤であるトルリシティ多く処方しており、大変良い効果が確認されています。

もっとも注目されることは膵臓のβ細胞の機能そのものを改善することが期待されていることです。動物実験ではβ細胞の数が増えて、機能が回復していくことが証明されています。

これはまさしく糖尿病治療の新時代の訪れといえるでしょう。

2016/10/1


  

糖尿病治療を自ら体験

糖尿病の専門医という肩書を持った方は多数おられますが、実際に自らの治療体験のある方は多くはありません。

私は糖尿病ではないですが、空腹時血糖が115前後の時があり、ぎりぎりの予備軍です。そこで自己血糖検査を行って、糖代謝について研究しております。また、試験的に自ら血糖降下剤を内服してみて、その効果や副作用を体感しております。糖尿病を心底理解するには自己血糖検査は必須であると考えており、本物のプロと自認している次第です。

実際に新しい薬が出たら自ら服用してみて、食前と食後30分おきに採血して血糖の変動をみています。朝・昼・晩・夜間の血糖をみたり、1週間ごとに効果がどの程度のものか血液検査を行い、食欲の変化、体調の変化、低血糖にならないか、体重の変化などを観察しています。GLP-1製剤の自己注射でも同様に効果を確認しています。

『炭水化物は血糖が上がるので、食べないほうがよい』との記載が一般向けの書物でしばしば見られます。一方、専門家は『食事はバランスよく』と勧めます。いずれが正しいでしょうか?
確かにおにぎりを食べると血糖は上がります。ラーメンを食べるとわずか330kcalにも関わらず、私の血糖は200近くまで跳ね上がりました。このときは、『これはやばい、やっぱり予備軍だ。』とがっかりしたものです。一方、アルコールを飲みながら、ハムなどの蛋白質や脂質をつまみに食べても血糖は上がりません。
自分は糖尿病だと公表している方が飲み屋で『酒は飲んでもいいんだよ。酒では血糖は上がらないんだよ。』などと大きな声で話しているのを聞いたことがありますが、血糖に関してのみ言うと、まったく間違いということでもないようです。しかし、ビールや日本酒は糖質を多く含んでいますし、塩分や脂肪分の多いつまみをついつい食べてしまいます。結局、肥満、中性脂肪の高値の原因となりますので、肝機能の悪化と合わせて糖尿病悪化の大きな要因となります。大きな声で言ってはいけません。
 
また、蛋白質や脂質ばかりを食べていたら、エネルギー効率が悪く、いざというときに力が出ません。脳はブドウ糖のみを栄養とするので、頭の働きも悪くなります。蛋白質ばかりでは老廃物が腎臓に悪影響をあたえ、痛風の原因になります。また、脂質の過剰摂取はカロリー過多となるばかりでなく、高コレステロール血症を助長し、動脈硬化の原因となります。やはり、栄養は炭水化物も含めてバランスよくとったほうが良いでしょう。

食事は朝昼晩バランスよく食べて、夜寝る前の食事、夜食や間食は極力さけたほうがよいでしょう。いわゆる『ぺろりとたいらげてしまう。』という状況はよくありません。早食いをやめて、まだ、おなかがすいている程度で終わりにするのもダイエットのこつです。食後は適度の運動によりカロリーを消費し、体のインスリンに対する感受性を高めてあげるのが効果的です。

空腹時血糖の高値は網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害の原因となります。一方、食後の高血糖は心筋梗塞や脳梗塞などの大血管病と関連が認められています。

食後の血糖測定が非常に重要ですので、私は患者さんに食事をとった上で受診してもらっています。受診の際に食事や薬を抜くのはバランスを狂わす原因となり、低血糖の危険もあるため、お勧めしません。

食後高血糖をコントロールする薬にαGI(ベイスン、グルコバイ、セイブル)という薬があります。炭水化物の分解を遅らせる作用があり、食後の急激な血糖上昇を抑制することができます。その分、消化吸収が遅れるため、腸管内でガスが発生するのが難点です。私はグルコバイを内服してみて、ラーメンを食べた後の血糖値のピークが50も下がるのを確認しました。わずか1回の内服で効果が確認されました。1か月も続ければ糖尿病の方のHbA1cは下がってきます。しかしながら、排ガスと腹部膨満にはまいりました。本当にひっきりなしにガスが出続けます。診療に支障が出るため実験は数日で終了となりました。

それ以来、グルコバイをきちんと内服している患者さんをほめるようになりました。『よく頑張っていますね。腹は張りませんか?排ガスは大丈夫ですか?』多くの方は『最初は腹が張りましたが、今は大丈夫です。ガスはよく出ますが、気持ちよく出るので大丈夫です。』など、案外と受け入れはよいです。徐々に慣れの現象が生じ、平気となるのですが、実際に自分で体験してみるとこれはなかなか大変でした。
接客業の方や周囲に人の多い職場の方には不向きでしょう、タクシーの運転手さんにもあまり薬ないかもしれませんね。

次に試してみたのはアクトスです。これは体のインスリンへの感受性を改善させ、インスリンの働きを助ける作用のある薬です。体質改善のような薬なので、効いてくるまで時間がかかるのではと考えていましたが、実際はまったく違いました。1錠内服しただけで、空腹時血糖値は100以下となり、低血糖症状を覚えたのでした。これはすごいクスリだと実感した次第でした。
ただし、アクトスにも問題があります。血糖が下がる分、腹が減ってしまい、食事量が増えてしまうのです。どんどん食べてしまうと体重が増えてしまいます。しっかり、ダイエットをしながらの内服が重要であるという、当たり前のことを再確認した次第でした。
アクトスの場合もなれの現象がみられ、次第に低血糖症状や強い空腹感は感じなくなります。しっかり自制できれば、大変よい薬です。

インクレチン関連薬であるDPP4阻害薬は多くの種類がありますが、効果はほとんどかわらず、非常にマイルドです。薬を飲んでいるという実感は全くありません。低血糖も生じません。血糖変動の山が低くなりなんとなく効くというのが特徴です。
日本での処方が70%もあるというのは、副作用がなくマイルドに効くという点で、慎重な日本人好みの薬剤だからでしょう。
週1回製剤のザファテックについてもまったく同様です。違和感は全くありませんでした。週に1回飲むだけなので服薬は非常に楽です。

SGLT-2阻害薬はどうでしょう?服薬してみて数時間後には大量の尿糖が確認されました。即効性のある薬です。血液中の糖を尿中に流してしまう薬で、70g程度の糖質カットをしているのと同じ効果があります。空腹時で30程度、食後で70程度の血糖降下作用があります。尿がたくさん出るということですが、生活に支障がでるほどではありません。普通の生活をしていれば、脱水になることもありません。
ただし、激しい運動をされる方には不向きです。私は夏場に思いっきりテニスをしたら、エネルギーロスになりバテテしまったことがあります。2ヶ月ほど飲んでみたら、3kgの体重減少が確認されました。これはなかなかお勧めの薬です。米国では非常に多く処方されているのですが、本邦で、は処方経験の少ない医師が多いです。
若くて肥満気味の方に最適の薬です。屋外での肉体労働の方、ボイラー室で働く方、アスリート、高齢者、やせ型の方、膀胱炎を繰り返している方には処方してはいけません。

GLP-1製剤は注射薬ですが、最も有効とされているくすりです。自分自身の経験では、なんとなくむかむかとして、食欲がなくて、少し元気がなくなりました。調子悪いな~という感じでしたが、これがGLP-1製剤の効果です。2週間ほどでこれらの副作用はなくなり、食欲は抑えますので、過食しなくなり体重が減ります。血糖降下作用は良好です。高い時だけ下げるので、食後の血糖上昇を抑えて、空腹時の低血糖はみられません。

内服薬の併用投与でも効かない方やインスリンの効果がいまいち得られない方に併用すると、こんなにも効くのかというほどに良い効果がみられます。週1回製剤のトルリシティ(デバイス名はアテオス)が簡便でお勧めです。このデバイスは、針が見えないのです。お腹の皮膚にあててスイッチを押すだけで注射が終わってしまいます。針が刺さったかどうかもわからないほど痛くありません。自己注射がこわいと思っている方は多いと思いますが、あてておすだけ『アテオス』というデバイスの名前どおりです。

以上は糖尿病予備軍の私の体験であり、本格的な糖尿病患者さんの場合にはこれらの薬が急激に効くということはありません。

2型糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法であり、腹いっぱいになるまで食べないことと、適度な運動を行うことで、減量が実現でき血糖は下がってきます。薬はあくまでもこれらの補助であることは強調してもしすぎることはありません。
 
一方でどうしても薬が必要な方がおられます。さほど太ってはいないし、大食いでもない、運動もそこそこしている、それでいて食後高血糖がみられる方などです。
 
また、インスリンが枯渇しており、空腹時血糖が高い方はインスリン治療の適応となります。
 
糖尿病の薬やインスリンを毛嫌いする方がしばしばおられますが、これらの薬は必ずしも一生続けなければならないというものではありません。むしろ、きちんと血糖をコントロールすることにより、体のインスリンに対する感受性が回復し、薬の減量ないし中止が可能となってきます。

以上はすでに教科書的な知識ではありますが、自ら体験してみると説得力が違います。自信をもって患者さんを指導することができます。

空腹時血糖が200近くても、あるはHbA1cが7%を越えていても放置されている患者さんが多数おられます。患者さんの治療に対する無理解については、きちんとわかるように説明を行う必要があります。

一方、医師のほうにも治療導入におよび腰のものが多くいて、問題となっています。不勉強、理解不足、経験不足が大きな問題です。十分な研修、臨床経験を持たずに、みようみまねで糖尿病もみている医師が多くいますので、ご注意ください。すべての内科医が糖尿病に精通しているわけではありません。とんちんかんな治療をしている医師がいますので、気をつけなければなりません。また、患者さんのいいなりになっている医師の姿勢にも問題があります。必要な治療はきちんとその必要性、効果やデメリットを説明した上で、提案していかなければなりません。
 
糖尿病治療は病態に応じての、治療法の選択が非常に重要となります。学べば学ぶほど、経験を重ねるほどに味がでてくるのが糖尿病診療です。

2016/10/20


■『持効型インスリン』による1日1回のインスリン療法について(BOT療法)


糖尿病のコントロールの悪い患者さんに『このままでは10年後には目がつぶれて失明します、腎臓もダメになり透析になってしまいますよ。そろそろインスリン導入も考えた方がよいでしょう。』というお話をすると俄然頑張りだして血糖値が正常化してしまう例があります。
逆に言うとそれほどにインスリン治療はこわがられている、あるいは嫌がられている治療法のなのです。
ところが実際に一部の人にはどうしてもインスリンでなければいけない方もいます。学会では『インスリンになるぞ!』と脅して、頑張らせるのはやめましょうということになっています。きちんとした、病態説明の上で説得していくことが重要です。
さらに、本来はインスリンを必要としない2型糖尿病であっても、少量のインスリンを追加することによりてきめんよくなる方がおられます。
このような場合には1日1回のインスリン治療が有効です。
持効型インスリンは1日1回のインスリン注射にて24時間にわたり、一定量の基礎インスリンを補充できるため、空腹時血糖を良好に維持できるのみでなく、空腹時の低血糖を生じることなく、食後の高血糖をコントロールできるようになります。また、経口薬を内服中の方には、内服を継続したままでインスリンを追加することにより、血糖変動レベルを均等に落とすことが可能になります。この方法をBasal supported oral therapy(BOT)といいます。
1日1回のインスリン投与はこれまでのインスリン治療に比し、非常に楽で抵抗感なく導入できます。
私は患者さんにインスリンをお勧めするときに、実際に自分の腹に針を刺して見せます。痛みはなく操作は非常に簡単です。患者さんはそこまでしてくれるのかと驚き感動し、インスリンの導入に同意してくれます。
インスリン注射は難しいものではなく、注射の痛みはほとんど感じません。この方法は2型糖尿病コントロール改善、1型糖尿病のインスリン開始の突破口としてとても有用です。
まずはインスリンに対する先入観を取り去ることが重要です。従来の治療にて糖尿病のコントロールが不良な方は、ぜひご相談ください。
 

 

食後高血糖に注目を!

糖尿病の指標として血糖値とヘモグロビンA1c(HbA1c)があります。血糖値は食事や運動により大きく変動します。一方、HbA1cは最近3ヶ月間の血糖コントロールの指標であり、6%以下が最適なコントロールとされており、7%以上が持続すると、長期的に合併症が生じます。
血糖値が正常であるにも関わらずHbA1cが高値の方が時々おられます。このような方は受診時に食事を抜いていてよい値を出していますが、実は食後には血糖値が高いのです。
これを食後高血糖といい、食事に応じてのインスリン分泌の反応が遅いのです。
一方で食後の血糖が高いにも関わらずHbA1cが正常値の方もおられます。このような方は、空腹時に血糖が下がっており帳尻があっているものと考えられます。インスリンの分泌が遅いため食後に血糖値が上昇してしまうが、トータルには遅れて大量のインスリンが分泌されており、空腹時には血糖が下がっているのです。
ややこしい話になりましたが、血糖は空腹時のみでなく食後に採血してみることが大切でHbA1cのみでは正確な判断ができないということです。
食後高血糖は心筋梗塞や脳梗塞など太い血管の動脈硬化の原因となることが分かっています。一方、空腹時の高血糖は網膜症、腎症、神経障害など古典的な糖尿病合併症の原因となります。
食後高血糖をコントロールするには、野菜などを先に食べて、ゆっくりと食事をすることにより炭水化物の吸収を遅らせることです。砂糖菓子のようなもろに甘いものを食べれば血糖は急上昇してしまいます。
薬剤としては糖質の吸収を遅らせるものとしてセイブル、ベイスン、グルコバイなどの薬剤があります。また、食直後のインスリンの分泌を促す薬でグルファスト、ファスティックなどがあります。
肝臓、筋肉、脂肪組織のインスリンに対する反応が悪い例も多くこれをインスリン抵抗性といいます。インスリン抵抗性を改善する薬としてはアクトス、メルビンがあります。
近年は基本薬としてインクレチン関連薬が使用されています。『インクレチン』とは腸管から分泌されるホルモンで膵臓に作用してインスリンを分泌させる働きがあります。インクレチンは食事をして血糖値が上昇してくるときに作用して血糖値に応じて分泌されます。この働きを利用したのがインクレチン療法です。
インクレチンはDPP-4という酵素により速やかに分解されてしまいます。DPP-4の作用をDPP-4阻害薬(テネリア、ネシーナ、トラゼンタ、ジャヌビア、エクアなど)により、阻害することにより、インクレチンが分解されずに、血糖値に応じて膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促します。
血糖値が上昇しているときのみに作用するため、低血糖を起こしにくいという利点があります。また、体重増多をきたしにくいというのも大きなポイントです。
食後の血糖上昇に対しての作用に優れており、従来の糖の吸収を抑える薬剤や直接インスリンを分泌させる薬よりもよく効きます。
1日1回の内服でよいということも、大きなメリットですね。毎食前にきちんと内服というのはなかなかできないものです。現在は週1回製剤もあります。(ザファティックなど)
また、この薬剤は薬理作用の異なる他剤との併用も非常に効果があります。
インクレチンそのものの注射薬も存在します。GLP-1製剤であり1日1-2回注射するものと週1回のものがあります。血糖に応じたインスリン分泌作用に加え、食欲を落とす作用があり、効果は良好です。他の薬剤、インスリンとの併用によりさらに効果が高まります。
血中の糖を尿中に排出してしまう薬もあります。血糖で35‐75㎎/dlの低下、HbA1cで1%の低下、3kgの体重減少が得られます。他の薬剤、インスリンとの併用が可能です。肥満傾向の方に有用です。
インスリンの基礎分泌が乏しい場合には、インスリンの長時間にわたる分泌を促す薬としてアマリールがあります。血糖低下作用は他剤に比し強力なため、低血糖に注意が必要です。他剤に少量のアマリ-ルを追加すると非常に効果が良いことがあります。
どうしてもインスリンが足りない場合にはインスリン治療の適応となります。
インスリン治療は内服薬をそのまま継続したままで1日1回長時間にわたり有効な持効性インスリン(ランタス、トレシーバ)を打つ方法がお勧めです。 ただし、毎食後に血糖が上がってしまう場合には、毎食前に超速効型インスリン(モノラピッド)を打つ方法が勧められます。
以上の治療法をさまざまに併用して最適な血糖コントロールを目指すことが10年後の明るく豊かな生活を約束してくれます。
空腹での採血を毎回行っていては、低血糖や脱水で具合が悪くなる方や、待ち時間にいらいらされる方も多いと思われます。
当院では採血の際に空腹で来院することはお勧めしておりません。むしろ普通にお食事をしてきていただいた上で採血を行うことをお勧めしております。
 



 

自己血糖採血の勧めと治療法の選択について

初めて糖尿病と診断されショックを受けられている方、病態を理解して積極的に食餌療法、運動療法に取り組んでいる方、経口血糖降下剤にて治療を受けている方、インスリン治療を受けられている方など、さまざまな状況の方が医師とともに試行錯誤を繰り返し、いろいろ悩みながら、治療に取り組んでいると思います。

糖尿病の病態を理解する一番の早道は自己血糖測定です。インスリン治療中の方は健康保険にて検査キット一式が得られますので、是非積極的に取り組んでいただきたいと思います。インスリンを使用していない方には、実費にて測定器、検査キットを手配いたします。

当院でお勧めしている血糖測定器は、ほとんど痛みがありません。患者さんはよろこんで血糖測定に励んでいます。

空腹時の血糖値、食後の血糖値、食事の内容により血糖値の変動がどのように変わるのか、運動の影響はどうかなど、ご自分の血糖変動のパターンを把握することは、治療法の選択に大きな助けとなります。
空腹時の血糖や食後30分ごとに2時間まで血糖の経過を追ってみたりすると、ご自分の糖尿病のパターンがわかります。
 
空腹時血糖は100前後で良好であるが、食後血糖が200位まで上がってしまい、なかなか下がらないという方がおられます。これを食後高血糖といい比較的大きな血管の動脈硬化と関連しており、脳梗塞や心筋梗塞の大きなリスクファクターとなります。

食後高血糖のかたは、インスリンは出てはいるがインスリンの分泌反応が遅い場合とインスリンに対する肝臓や筋肉、脂肪組織の反応が悪い場合があります。これをインスリン抵抗性といいます。

インスリンの分泌反応が遅い場合にはグリニド(シュアポスト、グルファスト、ファスティックなど)の速攻型インスリン分泌促進薬が有効です。毎食直前に内服する必要がありますが、患者さんの受容はかなり良いです。他にはαGI製剤(ベイスン、グルコバイ、セイブル)などのような腸管内で糖質の分解を遅らせることにより、血糖の急激な上昇を抑える薬が有効です。ただし、これらの薬剤は腸管にガスがたまり、腹満、排ガスで苦しむことがあり、当初は1日1回で少量から開始し、1日3回毎食前に増量していく必要があります。

インスリンはたっぷり出ているが、インスリン抵抗性のために血糖が下がらない方については、インスリン抵抗性改善薬であるアクトスが有効です。この薬は空腹時の肝臓からの糖の分泌を抑制したり、食後に急激に血液中に吸収されてくる糖を肝臓や筋肉へと吸収し、血糖値を適正にコントロールする作用があります。空腹時血糖が高い方にも食後高血糖の方にも有効です。この薬は大変切れが良いのですが、血糖が下がり食欲が出てしまうので、食べ過ぎて体重が増えてしまうことがあります。きちんと食事運動療法を行いながら、服用しなければなりません。また、下肢に浮腫を生じることがあるため、塩分をとりすぎないように気をつける必要があります。

肥満型の方には体重増多をきたしにくいとされるビグアナイド(メトグルコ)がお勧めです。作用機序はアクトスと似ており、高容量にて使用すると、十分な効果が得られます。米国ではまず第一に使用するべき薬と位置付けられており、日本でも処方が増えています。経験の少ない医師が最低量で処方している例がよくみられますが、これでは十分な効果は得られません。1000-2000mgの容量まで増量してみると非常によく効きます。また、DPP-4阻害薬をはじめとしたあらゆる薬との併用が可能です。GLP-1製剤やインスリンとの併用も有用です。

ビグアナイドは造影剤を使用する検査の3日前から検査後2日間は服用を中止する必要がありますので、ご注意ください。

食後高血糖でインスリンの分泌が足りない場合には、超速効型インスリンであるモノラピッドを毎食直前に打つと有効です。インスリンは絶対いやだといわれる方が多いのですが、現在の機器は非常に進歩しており、簡単、安全で痛みもほとんどありません。インスリンが是非とも必要と判断されれば、躊躇するべきではありません。

一方、空腹時の血糖が高い方は、基礎インスリンが足りない状況であり、アマリールなどの基礎インスリンの分泌を促す薬剤ないしはランタス、トレシーバなどの持効型の基礎インスリンを1日に1回補充するとよいでしょう。空腹時血糖の高値は糖尿病性網膜症、腎症、末梢神経障害など細小血管の障害に関与していることが分かっています。

アマリールあるいはインスリンは血糖値を下げて糖の利用を促すのですが、血糖が下がり、食欲が出て、体重が増えてしまうことがあります。特にアマリールは大変切れが良いのですが、長く使用すると体重が増えてきてインスリン抵抗性が生じ、効かなくなってしまうことがあります。これを2次無効といい、この場合はいたずらに用量を増やすよりは、他の薬に変更するかインスリンを導入するほうが早道です。

経口血糖降下剤を内服していて、コントロールがいまいちという方には、現在内服中の薬はそのままで持効型インスリンであるランタス・トレシーバを1日1回少量追加するとよくなることがあります。現在の血糖変動はそのままで、全体のレベルを下げるやり方で、近年では主流となってきております。これはBOT療法(Basal supported oral therapy)と呼ばれております。


糖尿病治療は病態の正しい把握と病態に応じての個別治療となります。
健常人では空腹時血糖は80前後、食後血糖は120程度と食事の影響をほとんど受けないほどに狭い範囲に血糖が調整されています。HbA1cは6%以下です。
外来での随時血糖が140以上の方は食後高血糖の可能性があり要注意です。
たまたま高いねではすまされないのです。

糖尿病治療においては低血糖にならないように注意しながら、空腹時血糖値140以下、食後血糖180以下、HbA1c 7%以下は維持したいところです。
血糖コントロールでお悩みの方は是非ご相談ください。

2016/10/20