甲状腺腫瘍の診断と治療方針について、頚部エコーについて

当院では頚部エコーを得意としているため、ほとんどの患者さんが年に1回、首周りのあらゆる臓器について精密検査を受けておられます。
 
他院では、今回は甲状腺だけ、別の機会に頚動脈の動脈硬化の評価というように2回に分けて行っていることが多いです。唾液腺をみているところはほとんどないのではないかと思います。
 
別々に検査してその都度、検査費用をいただけるのですから、検査時間も短縮でき経営的に有利ですよね。
 
甲状腺エコーにかかる時間は約5分、頚動脈エコーも同様に約5分です。しかも、いずれかの検査中に、両方とも画面にはみえているので、両方とも診断できてしまうのです。
頚動脈エコーの際に甲状腺腫瘍を見つけても『甲状腺にも腫瘍があるようですよ、今度また詳しく検査しましょうね。』なんていっているんでしょうね。ちょっとせこい気がしませんか?
 
当院では甲状腺の精査ののちに、頚動脈の動脈硬化についての評価を行い、さらに内頚動脈および椎骨動脈の血流測定をおこない、エコーでは見えないさらに頭側に狭窄がないかを検討しています。
 
ついでながら、顎下腺、耳下腺の腫瘍の有無についても検討し、鎖骨下動脈まで観察することもあります。リンパ節についてもよく見ています。ここまでやっても、費用の追加はありません。甲状腺だけをちょこっとみても費用は同じなのです。
 
そのようなわけで、当院では非常にたくさんの甲状腺腫瘍の患者さんをみさせていただいております。10人検査すると4-6名には甲状腺腫瘍がみられます。これほど甲状腺腫瘍は頻繁にみられるものなのです。
 
甲状腺腫瘍の診断をしたところ『専門の施設を紹介してくれませんか?』といわれたことがあります。『湘南地区のクリニックでは当院が患者数ではトップクラスなんですよ。』とお話しし、『これば今日診断した人たちです。』と同日の患者さんの画像を数名分みせてあげると、みなさんびっくりしておられます。
 
甲状腺腫瘍について詳しく言うときりがないのですが、多くは良性腫瘍で腺腫様甲状腺腫といわれるものか濾胞腺腫です。
 
まれに甲状腺癌も発見されます。甲状腺癌のうち一番多いのは乳頭癌ですが、これも進展が遅いので命を奪われることはほとんどありません。腫瘍内にこまかい石灰化がみられ、特徴的な所見から診断は容易なのです。当院では細胞診もしょっちゅう行っておりますので、最終診断まで可能です。
穿刺細胞診は細い針を甲状腺に刺して、細胞をとってくるものですが、慣れていればごく簡単な手技で、5分程度しかかかりません。
 
一度は細胞診を行うことが多いですが、多くはエコーでの経過観察で十分です。
甲状腺腫瘍と診断されても決して心配しないでください。
 
半年から年に1回のエコーによる経過観察で十分対処可能です。手遅れにすることはありません。
 
癌が疑われるときは神奈川県立がんセンターなど専門施設へ紹介しています。
表参道にある伊藤病院はあまりにも有名ですが、混みすぎており、手術待ちが長いようです。
それでも伊藤病院を希望される方も多いので、当院からも多数の患者さんを紹介しています。
 
甲状腺腫瘍のチェックや頚動脈エコーは通常の検診には含まれておりませんので、気になる方は是非ご相談ください。初診当日の検査も可能ですのでお気楽にどうぞ。
 
また、頚動脈硬化症と診断されている方も多数おられます。血圧が高い、脂質や血糖が高いにも関わらず、治療を拒否している方々が多くおられますね。タバコがやめられない方もおられます。
頚動脈エコーにて動脈硬化が進行していることを目の当たりにすると、さすがに治療に積極的になられます。高血圧や脂質異常症の薬は飲んでいた方が、心血管病(狭心症・心筋梗塞・脳梗塞)の発症がしっかり予防できるので、粘らない方がいいんですよ。糖尿病についても早めの治療介入が長期予後を改善します。タバコはやめるように努力しましょう。
意地でも薬は飲まないという方、考えを変えたほうが良いと思います。
 
動脈硬化の診断には眼底検査も同時に行い動脈硬化について検討することが多いです。眼科に通っているからといわれる方も多いのですが、頚動脈は太い血管、網膜動脈は最小血管であり両者を同時に評価した方がより正しい診断に結びつきます。眼科疾患のための検査ではないので、眼科通院中の方も受けていただいております。動脈硬化のみならず、高血圧性変化、糖尿病性変化、網膜出血も診断可能です。加齢黄斑変性症、白内障なども眼科より先に診断しているケースがたくさんあります。その場合は即刻、優秀な眼科医を紹介しています。
 
ついでながら、顎下腺腫瘍、耳下腺腫瘍もよく見つかります。
これらは東海大の耳鼻咽喉科と提携して治療にあたっております。
 
詳細な頚部エコー検査は当院でしか得られない医療サービスです。
動脈硬化の評価には眼底検査と合わせて検査をお受けください。
 
2016/11/27


 

橋本病(慢性甲状腺炎)と妊娠について

橋本病は非常に頻度の多い疾患で、女性10人に1人、男性40人に1人の割合でみられます。

甲状腺機能低下症の原因として最も多いのが橋本病です。

しかし、橋本病は甲状腺機能低下症がかなり進行しないと何も症状がないため、
その多くは見のがされております。

症状とはなんとなくだるい、疲れやすい、動作がとろい、寒がり、便秘、体重増多などです。
高齢者の場合、認知症と誤診されている場合もあります。
ぼけたとおもわれていた方が、治療によりしゃきっとすることがあります。
長期的には動脈硬化のリスクとなり、心筋梗塞などの心血管病の発症要因にもなり得ます。

橋本病はバセドウ病と合併することがあります。
また、稀ですが悪性リンパ腫という悪性腫瘍を合併することがあるので注意が必要です。

甲状腺機能が低下すると甲状腺ホルモンであるfT3やfT4が低下し、それと同時に脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が亢進してきます。

ホルモンが低下している場合は、上記のfT3、fT4、TSHの値が正常範囲に維持できるように内服でホルモン(チラーヂン)を補充してあげるだけですので、治療法としては簡単です。

甲状腺機能が正常でもTSHのみが上昇している場合があり、ホルモンの数値が正常範囲内にあっても体がホルモンが足りないと感じている状態です。これを潜在性甲状腺機能低下症といいます。

TSHが10以上の場合動脈硬化や認知機能低下の原因となるとされており、
TSHを10以下に維持できるように甲状腺ホルモンを補充します。

妊娠中の場合の甲状腺機能のコントロールはさらに厳格に行う必要があります。

甲状腺機能の低下は不妊・流産・早産の原因となります。
また、胎児の精神・神経機能の発達にも影響します。

妊娠初期のTSHの目標値は2.5以下です。

妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が30~50%増加するため、さらにチラーヂンの服薬量を増やす必要があります。
妊娠とわかったら服薬量を週に2回だけ倍量にしてなるべく早く主治医を受診してください。

受胎希望の方は妊娠前からTSHのコントロールが必要です。
不妊治療をおこなっている産婦人科の先生は詳しいと思われますが、一般の内科医の多くはよくご存じないと思われますので、注意が必要です。

橋本病の診断は比較的容易で、甲状腺ホルモン、TSHの測定とともに、
病気の原因である坑サイログロブリン抗体(坑TG抗体)、坑TPO抗体の測定、甲状腺の触診での甲状腺の腫大や硬化、
エコー検査での甲状腺の腫大、粗造な変化、血流の軽度の増多などで診断できます。

ヨードの取りすぎで甲状腺の状態が悪化して、一時的にホルモンがもれでて、
甲状腺機能亢進症になったり、機能低下症が進行することがあります。

甲状腺疾患の方は昆布だしなどを常時使用することは避けましょう。

受胎希望の方は甲状腺の精密検査を受けておくことをお勧めいたします。

妊娠中以外の場合は、橋本病の経過観察は半年から1年に1回で十分です。
大きな負担とはなりませんので、その他の健康チェックとあわせて、受診されるとよいでしょう。

2016/10/23




 

バセドウ病の再発について


バセドウ病は若い女性に多い疾患です。
私の場合は診察室に入ってきた段階で、ちょっと様子をみただけで診断できてしまいます。

自覚症状は、なんとなくだるい、疲れやすい、やせてきたなどが多いのですが、
自分からバセドウ病ではないですかと、すでに自己診断されているかたもおられます。

当院の場合、診察前に血圧、脈拍数などのバイタルサインを測定しているため、
脈拍数が多いところに注目します。120/分程度のことが多いです。

一瞬みただけで診断できてしまうことが多いです。 
目がぱっちりと大きめ、甲状腺はやや大きめ、皮膚は浸潤、手指が震えています。

つかれやすくないですか?やせてきていませんか?汗が多くないですか?手が震えませんか?
ドキドキすることはないですか?

ほとんどの質問にあてはまります。
 
確定検査は甲状腺ホルモンの上昇(fT3,fT4),TRAb(TSH受容体抗体)の上昇と、TSH(脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン)の低下でほぼ診断されます。
甲状腺のエコー検査では、甲状腺が大きく粗造で橋本病と見分けがつかないのですが、血流をみると、火焔状に燃えているので大きな鑑別点となります。
 
橋本病で甲状腺の破壊が進行した時に、甲状腺からホルモンがもれでて、一過性の機能亢進症となることがあるので要注意です。また、亜急性甲状腺炎といって甲状腺の炎症疾患で一過性に甲状腺機能亢進症となることもあります。これらは治療法がことなりますので、しっかりと鑑別診断しなくてはなりません。

非常にまれですが、甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺腫瘍もあり、プランマー病といいます。

診断がまぎらわしいときはシンチグラムをもちいて、甲状腺のホルモン生産をみることにより、診断します。バセドウ病では甲状腺が濃厚に染まり、その他の破壊による疾患では甲状腺は染まりません。
 
バセドウ病の治療には薬物療法、手術療法、アイソトープ療法(アブレーションともいいます)があります。
本邦ではほとんどが薬物治療からはいります。
メルカゾールを3-6錠で内服開始して徐々に減量していくのです。
妊娠中は奇形の問題があり、プロパジールという薬が使用されます。
 
1年くらいで甲状腺機能は正常化し、メルカゾールも2日に1錠程度で、コントロール可能となります。これを半年くらい続けたところでいよいよ廃薬を考慮するのですが、
ここで判断をあやまると、高率に再発してしまい、今までの苦労が水の泡になってしまいます。
 
ふたたび症状がでてきて、ホルモンの状態ももとにもどってしまいます。
最初からやり直しです。
 
再発しやすい要因として以下のことに注意しましょう。
ひとつは甲状腺の大きさです。甲状腺が腫大したままの方は再発しやすいです。
エコー検査にて甲状腺の血流が多い方も、活動性があることを意味しますので、再発します。
また、TRAbが正常範囲まで低下していない方も、再発します。TRAbはバセドウ病の原因となる抗体です。
バセドウ病には根本治療といえるものがなく、病気の本体であるTRAbを直接消滅させる治療は今はないのです。あくまでも標的臓器(ホルモン産生工場)である甲状腺の生産管理をするのが、薬物治療なのです。
 
メルカゾールの廃薬の可否については慎重に判断し、難しい場合は最低量である2日に1錠を延々と継続しても問題はありません。毎日1-2錠を長期に継続しているかたもおられます。
 
早期決着という意味では甲状腺切除術が選択されますが、甲状腺の組織を残しすぎると、再発することがあり、すべてを除去した場合には、甲状腺機能低下症となるため、甲状腺ホルモンであるチラーヂンを生涯にわたり継続しなければなりません。
 
アイソトープ治療については有効な治療法であり米国では盛んに行われております。
この場合、効果があらわれるのに時間がかかり、最終的には低下症になり、やはりチラーヂンの継続投与が必要となります。
 
なかなかやっかいですね?
バセドウ病は生涯にわたり長く付き合う疾患として、悲観せずに治療にあたりましょう。
 
きちんとコントロールできていれば、日常生活に不都合はありません。
 
ただし、ヨードのとりすぎにはご注意ください。
昆布だしを毎日使うようなことはやめましょう。
 
2016/10/25