大腸内視鏡検査の工夫(教えたくない新兵器もあります)
当院では苦痛なく短時間に精度の高い大腸内視鏡検査を実践しています。そのためにはいくつかの工夫があります。
一つ目は以前からお知らせしている内視鏡ナビゲーションシステムです。
大腸は走行が複雑なため、同じように操作していても、どうしてもスコープが進まなくなることがあります。スコープが逆ひねりになったり、とぐろを巻いていて、押しても引いても動かないという事態が生じることがあります。
ナビゲーションシステムの使用により、スコープの走行がわかるため、無理な操作をしないで、スムーズに挿入可能となっています。
2つめはエンドカフビジョンの使用です。スコープの先端に装着したアタッチメントにはたこ足のように8本のフレキシブルアームがついており、スコープが抜けてしまうのを防いで、
スムーズな挿入をアシストします。スコープを引き抜く際にはアームが反転して粘膜を広げてくれるので、観察がしやすくなります。盲点である襞裏や接線方向の病変を見逃すことなく検査が行えます。ポリープを切除する際には、スコープをよい位置に固定して、安全な切除をアシストしてくれます。エンドカフビジョンはまだまだ普及していない新兵器でその価値を知る医師は少ないです。
3つめは適切な麻酔です。患者さんの体重や前回検査の情報を毎回検討して、
適切な薬剤・投与量を選択し、ときには輸液や麻酔薬から覚ます薬も使用します。
約1時間の安静でシャキッとした状態でご帰宅していただいています。
安全に苦痛のない内視鏡検査のキーとなる部分です。
スコープ硬度の変更可能な内視鏡で、曲がってしまう腸管をまっすぐにして挿入できます。
体格によりスコープの太さも選択できます。
検査中は空気は入れず、CO2ガスを用いるため、おなかが張りません。
スコープの進みが悪いときは、水で内腔を満たして腸管の道を広げる浸水法を用いています。
拡大内視鏡、NBI、TXIなど特殊画像での精査、色素内視鏡など技術の最先端をいっています。
ポリープの切除は電気メスを用いない出血合併症の少ないコールドポリペクトミー、平坦なポリープをより安全に切除するために、粘膜下に生理的食塩水を注入して切除する粘膜切除術、水中で粘膜を弛緩させて切除する水浸下粘膜切除術などを行っています。当院では安全な切除を心がけておりますので、日帰りでの治療が可能です。
なお、2cm以上の病変は入院が必要なため、適切な病院を紹介しています。
当院ではスコープ抜去前に腸管内のガスや水をしっかりと吸引していますので、
検査後に漏らしてしまったり、トイレから出られなくなるということはありません。
楽に安全に検査を受けていただけますように、今後も個々の患者様の
状況に応じたテーラーメイドの内視鏡検査を行ってまいります。
なお、当院は茅ヶ崎市の端っこに位置しており、交通機関が不十分です。
ご家族が車で送ってくれる方やタクシーをご利用いただける方はよいのですが、
そうでない方は遠方から検査に来られることはお勧めできません。
ご理解をお願いいたします。
自己免疫性胃炎(A型胃炎)とヘリコバクターピロリ感染胃炎(B型胃炎)について
A型胃炎の名称は古くからある病名ですが、実際の臨床の場ではあまり用いられておりませんでしたが、近年、自己免疫性胃炎(Autoimmune gastritis)の名称で注目されております。今回、日本消化器関連学会週間(JDDW2021KOBE)において、取り上げられておりましたので、ご説明いたします。
慢性胃炎は胃もたれや食欲低下などの自覚症状が生じます。成因の多くは「ヘリコバクターピロリ菌感染」によるものです。長い年月にわたるヘリコバクターピロリ菌感染により胃粘膜はあれた状態となり、胃の出口である前庭部から粘膜の萎縮が口側に広がっていき胃酸分泌が低下していきます。内視鏡的には萎縮性胃炎の診断となり、さらにひどくなると腸上皮化生をともない化生性胃炎と診断されることもあります。この時点で胃癌発症の確率が高くなり要注意なのです。
ヘリコバクター感染胃炎は抗生剤2剤と胃酸分泌抑制剤の併用(7日間朝晩内服)による治療により90%以上の方が治癒するようになりました。ピロリ菌の除菌に成功すると萎縮性胃炎の進行がおさまり、胃癌のリスクは低減します。しかしながら、ピロリ菌陰性の健常な胃と比較すると、胃癌発症は多くみられるため除菌に成功しても年に1度の内視鏡検査が勧められております。
一方で、慢性胃炎の成因のひとつとして「自己免疫性胃炎」が注目されています。胃体部の胃粘膜には胃酸をつくる壁細胞があり、胃酸は主細胞から分泌されるペプシノーゲンを消化酵素のペプシンに変える作用と胃酸による殺菌作用があります。自己免疫性胃炎は、免疫系の異常により胃壁細胞に対する自己抗体(抗胃壁細胞抗体)が作られて、胃酸分泌が低下していきます。胃内視鏡検査は特徴的で胃の口側である胃体部に萎縮がみられますが、胃の出口に近い前庭部には萎縮がないので、ヘリコバクターピロリ菌感染胃炎とは逆の分布となり、逆萎縮と呼ばれます。
欧米ではかなり以前より慢性胃炎の分類として体部が萎縮するA型胃炎と、萎縮が前庭部から口側に進展するB型胃炎とに分類されてきました。現時点では、A型胃炎は自己免疫性胃炎と同義であり、B型胃炎はヘリコバクターピロリ菌感染胃炎に相当します。
自己免疫性胃炎は、胃壁細胞より作られる胃内因子の低下により小腸からのビタミンB12の吸収が不良となり、悪性貧血と呼ばれる貧血が出現します。長期にビタミンB不足が続くと指先のしびれや歩行障害などの神経症状がみられることもあります。さらに胃癌の発生リスクも増加することが知られています。また、1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの他の免疫性疾患の合併も報告されています。
自己免疫性胃炎の診断は、内視鏡検査で特徴的な胃体部の萎縮と血液検査で行います。血液検査では抗壁細胞抗体と抗内因子抗体が陽性で、血中ガストリン値が高値になります。
まだ根治的な治療法はありませんが、ビタミンB12の補充が必要で内服では吸収が悪いため数ヶ月ごとの皮下ないし筋肉内注射でおこないます。必要に応じて鉄や葉酸の補充もおこないます。
通常の内視鏡検査で、胃粘膜に萎縮がみられウレアーゼ試験などが陽性であるとヘリコバクターピロリ菌感染胃炎として診断・治療されます。治療後の除菌判定は尿素呼気テストで行われることが多いのですが、陽性であれば除菌不成功として薬剤を変更しての2次除菌治療が選択されます。最近では自己免疫性胃炎で胃酸が出なくなると、胃内にピロリ菌以外のウレアーゼ活性を有する細菌が増殖して、尿素呼気テストが陽性になってしまうことが分かってきました。除菌不成功のために除菌治療が繰り返されている"泥沼除菌"の患者さんの中には、自己免疫性胃炎が混じっているかもしれません。内視鏡所見をきちんととらえて判断できることが重要なのです。萎縮の分布についての理解が必要です。このような状況下では、ピロリ菌感染の判定には便中ピロリ抗原検査が有用です。最近ではピロリ菌の存在診断に便中ピロリ抗原検査と尿素呼気テストを併用して行うことが多くなってきています。
以上、自己免疫性胃炎とヘリコバクターピロリ感染胃炎の違いをご説明いたしました。いずれも胃癌のリスクが高いので年に1回の内視鏡検査が望まれます。