画像診断コーナー

胸部異常陰影

胸部レントゲン写真です。
左中下肺野に大きな腫瘤が認められます。
肺癌が強く疑われます。
自覚症状は何もなく、定期チェックで撮像されたものです。

1年前の胸部レントゲン写真には腫瘤陰影は認めません。
たった1年でこのような大きな腫瘍ができてしまうとは・・・

とても怖いですね。

胸部CTです。
腫瘍は背側胸膜に接して存在します。

肺癌の疑いにて早急な精密検査が必要です。

大腸ポリープ切除術

大腸内視鏡の画面いっぱいに巨大なポリープを認めます。 
消化器専門医でないと進行癌と思い込んでしまうことでしょう。

専門医がみればこれは癌の一歩手前の大腸腫瘍と診断できます。
当院ではこのような大きなポリープでも外来で切除可能です。

巨大ポリープには太い茎が認められます。
この中にはポリープを栄養するための太い血管が通っています。

いきなり切除すると大出血することがあります。

ポリープの茎部にクリップをかけて血流を遮断しました。
これにより安全にポリープを切除できます。

ポリープはきれいに切除されています。
止血クリップのおかげで、出血は一滴もありませんでした。

創部にはさらにクリップを追加して、出血を予防しています。
病理検査の結果は『腺腫』であり、やがて癌に進展していくタイプのものでした。

当院ではこのくらいの大きさのポリープでも外来で安全に内視鏡で切除できます。
しかし、もう少し小さいときに受診していただければ、さらに安全、確実に治療できます。

大腸癌は女性では癌死亡の原因で一番多いものでもあるにもかかわらず、なかなか検査を受けようとしない方が多くおられます。

『一度も検査を受けたことがない』ということは、検査をうけるための大きな理由になりますね。
便潜血反応が陽性だった方は、必ず検査を受けましょう。

当院での盲腸到達率は95%以上で、ほとんどが5分程度で到達しています。
多くの方が『こんなに楽だったのは初めてだ』とおっしゃってくれております。
安心して検査をお受けください。

胃MALTリンパ腫

胃体中部後壁において襞が太く腫大しており、粘膜模様もなんとなくおかしいのですが、腫瘍とは断定できない病変でした。
粘膜下の病変なので悪性リンパ腫を疑うべきでしょう。

生検の結果はMALTリンパ腫でした。
MALTリンパ腫は多くは胃に発生する比較的悪性度の低い腫瘍です。
ヘリコバクターピロリ菌との関連が大きく、ピロリ菌の除菌療法を行うことにより多くが治癒します。

この症例はピロリ菌の様々な検査がすべて陰性でした。
そのような場合でも、検査でピロリ菌が検出できないだけで、ピロリ菌が関与している可能性もあるので、除菌療法を試みるべきとされています。

現在は検査の精度が上がっているため、意見が分かれるところと思います。

ピロリ菌の除菌療法を行ったところ、病変の腫瘤部分は欠落して、
不整な陥凹性病変に変化していました。

だいぶ期待しましたが、生検ではMALTリンパ腫のままでした。

もうしばらく経過をみることにしました。

その後、病変はさらに縮小傾向がみられたのですが、
生検ではMALTリンパ腫のままでした。

ピロリ菌の除菌療法により治癒する期待があったのですが、ピロリ菌の関与はなかったようです。

この症例についてはピロリ菌の第一人者である高橋真一先生(杏林大学教授;当時)に直接お会いしてご意見を伺いました。

ピロリ陰性MALTリンパ腫で徐々に悪化する可能性もあるので、放射線治療がよいだろうとの、貴重なアドバイスをいただきました。

放射線治療は安全に施行され、病変は消失しました。以後も再発なく経過しています。
大変貴重な経験をさせていただきました。