『Next Step 心電図を読んで心エコーを究める』
国立がん研究センター中央病院 中島 哲 先生
夏休みに一気に読みました。
簡単な症例提示の後に、心電図を深読みします。この所見だと右心室に負担がきているはずなど、そして、そのような波形になる理由までわかりやすく記載されています。そして、その予測の元に心エコーを行いますが、単に所見の羅列ではなく、病態に即したきれいなシェーマと説明がとてもわかりやすいです。最後に心エコー所見の実際の記載例、手術適応についても触れられています。
いまさらながら、心筋梗塞でQ波の生じる機序がよくわかりました。このような基本的なことが書いてある教科書は少ないように思います。
循環器もみる総合内科医、研修医にお勧めの1冊です。
同様の本で『エコーからみた心臓病学』 国立循環器病センター中谷 敏 先生も併せて読みました。
これもよかったですが、かなり古い本ですので、治療法などは若干遅れている可能性があります。
2021/8/16
『心エコー読影ドリル;国循・天理よろず印』
編集 国立循環器病センター 泉 知里先生
東京オリンピック開会前日に読み始めました。
当院は総合内科として循環器検査に心エコーまでを取り扱っています。
専門的診断というレベルではなく、ベッドサイド心エコーのレベルで、心不全における心機能の低下、弁膜症、虚血、心筋症、先天性心疾患などに関しての診断を行い、手術など超専門的は評価や治療が必要なときな、専門施設へ紹介するスタンスをとっています。
今回、本書を手にして、パソコンで動画を確認しつつ勉強を勧めていくと、いままで自分が十分に理解していなかった部分や高度専門性のある部分まで理解できて大変勉強になっています。
循環器診療に関わる総合診療レベルの医師、心エコーをはじめた研修医、心エコー技師のレベルアップには超お勧めです
2021/7/22
3週間de消化器病理
臨床医のための病理のいろは
自治医科大学教授 福島敬宣先生 南江堂
2020/1月の内視鏡学会関東セミナーに参加した際に出会った本です。
さまざまな疾患の病態の理解において病理学の知識は欠かせません。
私は学生時代から病理学に興味をもち、勉強を続けてまいりましたが、内科医として臨床にたずさわりながらも、難しい疾患を診るにあたってはその診断根拠を示した病理医と協議して、治療方針の決定にあたってきました。
特に消化器の分野においては、内視鏡をはじめとした形態学が重要であり、その根源は病理学にあり、病理医との連携は非常に重要となります。
本書は消化器領域における様々な疾患の病理学的理解が深まるように解説されており、大変勉強になります。
病理の本というと、通常は写真だらけで、基本的な部分がわかっていないと何が何だかわからないというような書物が多いのですが、本書ではわかりやすいシェーマにより解説がなされており、写真がありません。学生、研修医のみならず、消化器病理の理解を深めたいと考える医師にはとても役に立つ本です。
個人的にはシェーマと写真と並立していただけたら、もっと良かったと思いますが、著者の意向はてっとりばやくわかりやすい本、キモをおさえた本というのがねらいであり、疾患の理解を深めるための病理学という位置づけです。
とても面白い本ですので、消化器疾患にたずさわる医師には、是非、ご一読いただきたいと推奨いたします。
2020/11/5
膠原病診療ノート
三森明夫先生 日本医事新報社
私は茅ヶ崎徳洲会総合病院に勤務していたときは消化器部長として主に消化器科の診療に従事していましたが、実は若手の頃はリウマチ科を標榜していました。新横浜山前クリニックの先代の院長に直々ご指導をいただきながら、当時の標準治療であった金製剤(シオゾール)多くの患者さんに使用していたのです。
開業してからは、総合診療医としてあらゆる疾患に対応しており、リウマチ・膠原病を診る機会が多くなってきました。
各種自己抗体も数多く発見され、バイオ製剤が盛んに使用されるようになり、元々難解な膠原病診療がますます複雑となり、膠原病の書物をひもとく機会が増えてきました。
本書は膠原病について、総論から各論にわたり、実に詳しく記載されています。各論では通常の教科書には記載されていないような裏話や、豊富な自験例が紹介されているので、とても理解しやすいです。
ただし、あまりにも詳しい本なので、とても分厚いのが難点です。旧約聖書を読むかのようで、短時間で通読するのは困難です。興味のあるところから、毎日、1章ずつ読み進めているのが現状です。
膠原病を本気で学びたい方には是非とも読んでいただきたい1冊だと思います。
2020/5/4
ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療
萩野 昇 先生 医学書院
本書はリウマチ・膠原病に関して、プライマリーケアに重点を置いて、病態に基づいた考え方、問診・身体所見のとりかた、診断のポイント、鑑別診断と治療についてかなり熱く書かれています。
歴史的なことや裏話などもHuggy’s Memoに記載されており、リウマチ・膠原病学の理解を深めるにはとてもよい本だと思います。
2020/3/12に読み始めて3/21には読破してしまいましたから、読みやすい、読んでいて面白い本だといえるでしょう。
特にステロイド剤とMTXを中心とした免疫抑制剤の使い方に多くのページが割かれています。MTXの巧みな使い手と思われ、かなり詳細に、プロとしてのコツがちりばめられています。多くの症例をMTXでうまくコントロールしているのだと思われます。
一方で、リウマチ治療において主役のMTXを実力的に凌駕してしまっているバイオ製剤については『メトトレキサートを十分量使用して臨床的寛解が得られなければ、生物学的製剤を導入する』の一文にすぎると言及しているのみで、一切の説明がありません。
いまやバイオ製剤はTNF阻害薬、抗IL-6受容体製剤、T細胞の働きを抑えるアバタセプト、JAK阻害薬など、臨床的寛解どころか治癒・廃薬の可能性のある有効な薬剤がラインアップされており、それにあえて触れないというのは、何かしら著者の信念でもあるのか、『バイオは専門医へ任せよ』という言外のメッセージなのか?
バイオ製剤について詳しくない医師が本書を読んだ場合、バイオはまだまだ敷居の高い超専門的治療法なのかと誤解を招きかねないと感じました。バイオの適応と考えられる症例には時期を逸することなくバイオを導入しなければなりません。
本書はプライマリーケアのための序説であるとのことですが、一般内科医が膠原病の本を通読するというのはかなりの労力を要しますので、バイオについては他書に譲るというよりは、やはり、終着点までの道のりを示してもよかったのではないか?
簡単でよいから生物学的製剤の現況についても記載がほしかったと思われました。
2020/4/15
『胃炎の京都分類』の使い方・『消化器内科』 創刊号
春間 賢 先生 医学出版
内視鏡学会関東セミナーに参加した際に購入してきました。
内視鏡検査において胃炎の病態把握は大変重要です。
『胃炎の京都分類』は学べば学ぶほどに、胃炎に関しての関心が深くなり、内視鏡診断が鋭くなるといえます。
ピロリ菌に関しては、未感染、現感染、既感染が内視鏡観察のみで判断できるようになり、現感染が疑われる場合には、感染に関する検査を追加して行なう必要があります。
また、現感染はもちろん、既感染についても胃癌の発症リスクは極めて高くなりますので、定期的な内視鏡検査の必要性について説明する必要があります。
さらに、胃癌については通常観察では見つけられない、微小癌の診断についても習熟していく必要があります。
『胃癌の京都分類 改訂第2版』および『胃癌の京都分類 QandA』と併せてお読みください。
なお、早期胃癌の診断に関する書物は以下のページにご紹介しておりますので、是非お読みください。
2020/2/16
レジデントのための腎臓教室
ベストティーチャーに教わる全14章
前嶋 明人 先生 日本医事新報社
紫斑病性腎炎の患者さんを見る機会があり、腎臓疾患についていろいろな本を読んで勉強し直しました。
そのなかで、この本は腎臓の働きから、各疾患の病態生理まで大変わかりく説明されており、総合内科を指向している先生方には是非読んでいただきたいと思いました。
しかしながら、私が勉強したかった紫斑病性腎炎についての記載が見当たらなかった?
もちろんIgA腎症についての記載はあるのですが・・・
アンジオテンシンⅡが直接的に尿細管におけるNa再吸収の促進作用があるような図の記載がありますが、これはアルドステロンを介してのものだと思いますので、どうなっているのかなと思いました。
また、選択的アルドステロンブロッカーについての記載がなかったので、改訂版に期待したいと思います。
2020/2/16
上級医がやっている危ない心電図の見分け方
築島 直紀 先生 日本医事新報社
本書は2015年の日本循環器学会に参加した際に購入したもので、一通り読んだ後も時々パラリパラリと読み返しています。
従来の心電図の教科書は一つの疾患に、典型例が一つ提示されているだけのものが多いのですが、本書は危険な心電図についてランダムにいろいろなものが繰り返し出てきます。
簡単な症例提示と心電図でいったん考えてもらい、回答として、心電図所見のポイントの解説、経過の心電図、レントゲン、CT、心エコー、心カテの写真まで載せてくれています。
同じ疾患でも心電図の所見は様々であり、時には心電図は全く正常ということもあります。
こんな症状、こんな所見には気をつけろ、そして読影のポイントが簡潔に示されています。
スイスイと読み進められるのでとても読みやすいです。
なんども、繰り返し読んで危険な心電図を見逃さないようにする!
決定版といえる、超お勧めの書籍です。
2020/1/5
早期胃癌の拾い上げと診断
平澤 俊明 先生 日本メディカルセンター
本書には早期胃癌の拾い上げ診断のコツについての詳細が記載されています。
豊富なアトラスのなかからから、病変を探しだし、その分析から、病理診断まで考えるという構成で、豊富な演習問題により詳細に解説されています。また、総論において基本的な事項が詳しく解説されていますので、フィードバックしながら読み進めるのがよいでしょう。
JDDW2019で本書の内容についての講義があり、まさしく『目からうろこの』素晴らしい内容でした。
是非、ご一読されることをお勧めいたします。
2019/12/23
胃内視鏡検査・診断に自信がつく本
後藤田 卓志 先生(編著) 金芳堂
2019/11月のJDDWに参加した際に購入いたしました。
上部内視鏡検査を行うにあたり、是非とも必要な基本的事項の解説の後に、多数の演習問題がついており、胃の背景粘膜からピロリ菌の有無を考える、萎縮の程度を評価する、粘膜の異常所見の拾い上げを行う、その所見がなぜ胃癌であるか(胃癌でないか)、その理由を考える。
病変がどの写真に見えていたのか、どのような背景粘膜に、どのような肉眼型・組織型の病変があったのか、解説や追加写真をもとに理解を深めるという構成になっています。
非常に多数の内視鏡写真が提示されており、クイズ形式で読み進むうちに、こんな所見は要注意なんだというところから、病理組織の予想まで、かなりレベルアップできそうな内容です。
一気に読んで、さらにパラリパラリと復習しながら、総論の部分に戻って基本的事項の復習をするという読み方がよいと思います。
大きな癌は診断できて当たり前!
最近のトレンドは微少がん診断です。
『消化器内視鏡の登竜門』とあわせて、是非お読みください。
2019/12/23
消化器内視鏡の登竜門
田尻久雄先生監修 南行堂
2019/1月の内視鏡学会関東セミナーに参加した際に購入して、パラパラと読んだ後にしばらく、積ん読となっていました。
写真はとてもきれいなのですが解説が若干長くて読むのが大変でした。
秋にJDDW(日本消化器病関連週間)に参加して多数の微小癌の症例を見る機会があり、もう一度勉強し直しました。
早期癌の形態は非常に多彩で、時代ごとに変わる形態分類はあまり得意ではないのですが、観察した所見をどのように表現し、胃癌の存在診断、病変の範囲、深達度から病理の予測まで、内視鏡のプロがどのように考えているのかがよくわかり、非常に参考になります。
内視鏡検査が得意であるといえるための、押さえておくべきポイントが的確に記載されており、まさしく『登竜門』というにふさわしい1冊です。
2019/12/8
心不全管理をアートする・・・脚本はどう作るのか
北里大学北里研究所病院 猪又孝元先生
本書は心不全領域の第一人者である北里大学北里研究所病院の猪又孝元先生によるものです。
かつて心不全には禁忌とされてきたβブロッカーが、今や心不全治療の主役の座を得ているように、治療法の変遷があり、病態生理や各種薬剤の薬理作用、時間軸により治療が異なることなど、心不全の病態と治療についてわかりやすく説明されています。
治療をギアチェンジする、選択した治療を、一体何のためにやるのか、うっ血をとるという『目に見える治療』なのか、今後の予後を改善していくという『目に見えない治療』なのか・・・
時間軸の中で揺れ動く適材適所を常に意識し、脚本を書く。
これが心不全のアートなのです。
非常にわかりやすく読みやすい本ですので、是非、一読され心不全についての理解を深めることをお勧めいたします。
2019/11/11
レジデントノート増刊 Vol.21 No.11 臨床写真図鑑ーコモンな疾患編 集まれ!よくみる疾患の注目所見〜あらゆる科で役立つ、知識・経験・着眼点をシェアする81症例
様々な疾患の特徴的な所見が載っておりとても勉強になりました。
症例提示が簡潔で説明も長すぎないのですんなりと読めます。
かなり難しい症例も含まれていますが、秒殺で正解できると気持ちよいですね。
総合診療医にはたまらなく楽しい本です。
2019/10/15
循環器内科医のCKD冒険記 山下 武 先生 南山堂
本書は心房細動診療の超スペシャリストである山下武先生の渾身の書といえます。
多くの講演の場において本書に記載されている内容をお話しされています。
CKD(chronic kidney disease 慢性腎臓病)とは蛋白尿が持続したり、腎機能の指標であるクレアチニンの上昇が持続したものをいい、糖尿病・高血圧・慢性腎炎・加齢など様々な要因により腎臓の異常が持続し、徐々に腎機能の低下をきたすことがあるものです。
腎臓専門医以外の医師にとっては得体の知れない暗くて広い海のような分野であり、できれば避けて通りたい、わからないままに専門医に丸投げしがちなものでした。
CKDの進展は心血管死および非心血管死との関連が深く、末期腎不全・透析に至る前に死亡が生じやすい。そしてeGFRの低下、eGFRの低下速度、尿中蛋白の存在が予後悪化に大きく関与している。
CKDが心房細動を悪化させ、心房細動がCKDを悪化させる。そしてeGFRの低下した心房細動では非心血管イベントや非心血管死が増えており、治療に伴う副作用も多くなることから、抗凝固療法やアブレーションなどの治療方針の選択にも深く関わってくる。
心房細動の診療を通じてCKDについて学び、さまざまな結論を導き出し、いまやCKDというコンセプトはこれからの心房細動診療の質向上に必須との考えに至っています。
2019/9/26
Jmed 53 あなたも名医! 肺がんを見逃さない、画像診断のコツをおさえよう
神奈川県立がんセンタ- 山田耕三先生 日本医事新報社
誰も教えてくれなかった胸部画像の見方・考えかた
福井県済生会病院 小林弘明 先生 医学書院
上記2冊は肺がん画像診断セミナーに参加するに当たって予習のために読破いたしました。
胸部単純写真の見逃さないための読影法やCTも含めて画像の成り立ちについての病態生理・病理まで詳しく記載されています。アトラスや写真も豊富です。
このあとに肺がん画像診断セミナーに参加したので大変よく理解できました。
GGNとかtree-in-budの意味がわからないという方には、読んでいただきたい本です。
2019/9/23
『病気が見える 循環器』 メディックメデイア
この本は循環器疾患の病態から検査・治療法まで詳しく記載されています。
これまでの教科書はこの疾患は検査ではこんな所見と書かれているだけでその理由をしっかり説明しているものはあまりありませんでした。
アトラスが豊富でとてもわかりやすく病態生理が説明されています。
閉塞性肥大型心筋症でどうして僧帽弁閉鎖不全症が生じるのか?
よく理解していないなら、この本が助けになると思います。
2019/9/22
『レジデントのための血液教室』 宮川 義隆 先生
この本は血液疾患を見ていく中で出会ったさまざまな疾患について読み物的に書かれています。ユーモアに富んだイラストとわかりやすい解説で血液疾患を楽しく学ぶことができます。
最近読んだ本の中では一番面白かったです。
レジデントのみでなく学び続けるあらゆる医師に有用な1冊といえます。
2019/8/29
『抗菌薬の考え方、使い方・・・魔弾よふたたび』 岩田 健太郎 先生
本書は感染症の分野での第一人者である岩田健太郎先生により書かれた本で、いつもながら、こまかく、過激に抗菌薬の適正治療について説明されています。
総論と各薬剤の説明は詳しいのですが、疾患ごとの各論がないのが残念!
例えば急性前立腺炎に対する薬剤選択、投与量と投与期間、そしてその理由・理論まで記載されていればよいリファレンスとなるのですが・・・ほかの本に書かれているのかもしれませんが、この分厚い本でまかない切れていないとは?
感染症治療に特化した治療各論の本を探したいと思います。
2019/8/27
『現場で役立つ呼吸器診療のレシピ』 長尾 大志 先生
日常診療における様々な疑問について平易に書かれており、すぐに役立つ内容です。
咳・痰の治療からはじまり、肺炎、喘息、COPD、結核、肺癌、間質性肺疾患まで、診断法から治療法の選択、どうしてこのように治療していくのかという背景に至るまでわかりやすく記載されています。
2019/7/6