学会・医療講演会・研究会で得られた情報をご紹介するコーナーです。

『シンポニー潰瘍性大腸炎効能追加講演会』                                            
                                                     


横浜市立大学付属市民総合医療センター     
国崎玲子 先生


潰瘍性大腸炎に対する3番目のバイオ製剤としてシンポニーが承認されました。
シンポニーの特徴は製剤に対する抗体ができにくいことであり、従来のレミケードなどにみられた2次無効の発症が減少しています。
投与法は初回200㎎、2週後に100㎎、以後は4週間ごとに皮下注射していきます。
投与初期に大量の投与ができるため早く病状を改善させ、その後の継続投与により病気の寛解を維持できます。
薬剤のローディングにより早期に効果が得られ、抗体産生が少ないことにより
長期的に寛解が維持できる、そのため治療の継続率が良いなど、これまでのバイオ製剤を凌駕する利点がみられています。
レミケードやヒュミラの2次無効に際しても薬剤の変更により効果が得られます。
大変期待が大きいバイオ製剤といえます。


2017/9/7 横浜ベイシェラトンにて

『腰痛疾患、診断と治療の実際』                                            
                                                      藤沢市民病院整形外科 國谷 洋 先生


腰痛の鑑別診断と診断の実際について詳しく解説していただきました。
大変勉強になりました。
腰痛治療のおけるリリカの有用性についても説明がありました。

腰痛を訴える患者さんは非常に多いためすべての患者さんを整形外科に丸投げにするということはできません。
当院では可能な範囲で腰痛治療にも取り組んでおり、湘南藤沢徳洲会病院の脊椎外科の江原先生と提携して治療にあたっております。

2017/7/26 内科医のための腰痛診療セミナーにて

『SGLT-2阻害薬時代に入りつつある糖尿病治療の最適化~CGMの知見も含めて』                                            
                                                      東京慈恵会医科大学 西村理明 先生


西村理明先生はCGMの第一人者です。
今回はSGLT-2阻害薬の臨床的有用性とともに血糖変動の特性、特に食後高血糖のとらえ方について詳細な説明がありました。
血糖採血を毎回空腹で行われている医療機関はまだまだ多いのではないでしょうか?
空腹時の血糖値が100前後でも食後の血糖値が200程度まで急上昇している例がよくあります。これを食後高血糖と呼びますが、長期的な心筋梗塞や脳血管障害の発症は糖尿病と同様に高いことがわかっており、食後高血糖をしっかりと診断して治療していくことが重要となっています。
そのための簡単な方法として、受診の際の食事制限はしないで、ときには空腹時もよいですが、食後1時間、2時間、3時間など時間をずらして採血していただくことが大切となります。自己血糖測定をしている方についても、この0-1-2-3が重要なのです。

私は30年以上前から食後血糖測定の重要性について提言し実行してきましたが、かつての勤務先ではなかなか受け入れられませんでした。近年になりようやく、食後血糖測定の重要性が認知されるようになったわけです。当院では当然のことながら採血時の食事制限はしておりません。当初は患者さんに不信に思われることもありましたが、現在、当院においてはきちんと受け入れられております。

2017/7/21 海老名内科フォーラムにて

『心房細動治療イノベーション:生命予後改善と寝たきり防止をめざして』
済生会熊本病院心臓血管セ ンター 奥村 謙 先生


心房細動に対する治療の目標は突然死や心不全などの生命予後の改善と心源性脳塞栓症による片麻痺や寝たきりになるなどの機能予後を改善する役割があります。

心房細動に関しては脳塞栓症の予防が非常に強調されておりますが、死因となるのは突然死、不整脈死、心不全など心疾患によるものが多いのです。
心臓死の増悪因子としては古くから使われているジゴキシンがあげられます。
一方、改善因子としてはβブロッカーの使用が認められています。
心拍数の適切なコントロールが心不全の予防に重要とされています。

脳塞栓症の予防としては古くからワルファリンが使用されてきましたが、治療が不十分な場合、かえって脳塞栓症の発症リスクが大きくなるのでINRの適切なコントロールが求められています。非専門医による治療ではワルファリンを少なめに投与されていることが多く注意喚起がなされています。

DOACはワルファリンに比し、脳塞栓症の発症が、少なくなり、出血のリスクも少ないとこと、血液検査による薬剤有効量のモニターが不要なこと、納豆や野菜の摂取制限がないことなど、いいことずくめと考えられています。

しかしながら、90歳近い超高齢者や低体重の患者さんに対し適切に治療できているかどうかは疑問です。出血のリスクを減らすために、1/2量あるいは1/4量の投与が検討されています。

2017/7/13 ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルにて

『大腸腫瘍に対する内視鏡診断の実際と最近の話題』
東京医療センター 浦岡 俊夫 先生


大腸腫瘍に対する拡大観察やNBIを用いた観察における診断のポイントを明快にご講演いただきました。
本邦においては特に形態診断における分類が得意で世界の最先端をいっております
。大腸内視鏡検査における拡大観察やNBI観察はもはやあるべきものとなっております。

2017/7/4 南神奈川腸疾患カンファレンス 鶴ケ岡会館にて

『今こそ確認!IBD診療の最新治療ABC~内視鏡診断から治療まで』
横浜市立大学付属市民総合医療センター 国崎 玲子 先生


非常に広範囲な話題をわかりやすく解説していただきました。
特に内視鏡診断の難しい類縁疾患および炎症性腸疾患に合併する癌の特徴について詳しくご講演いただきました。

2017/6/14 ホテルサンライフガーデンにて

藤沢プライマリケア医のための精神医学勉強会
Psychiatry In Primary Care(PIPC)    信愛クリニック 井出広幸先生


PIPCはプライマリケア医が適切な精神科的対応ができるように知識やスキルを提供するプログラムで、井出先生が10年前から全国展開して発展してきたものです。

私は10年前に朝から晩まで缶詰め状態でプログラムを受けました。

今回、久しぶりに参加させていただきましたが、主に湘南藤沢徳洲会病院の初期研修医を対象に楽しくレクチャーが行われました。

医学的に説明のつかない症状の多くは精神疾患に基づくものです。

診療医学的なアプローチ、診断と治療のポイント、専門医への紹介のタイミングなど、大変勉強になりました。

湘南藤沢徳洲会病院、湘南鎌倉総合病院などで定期的に開催されておりますので、是非参加されることをお勧めいたします。

2017/6/8  湘南藤沢徳洲会病院にて



 

潰瘍性大腸炎に対する新しい治療ストラテジー
慶應大学 緒方 晴彦 先生 


潰瘍性大腸炎の疫学から診断と最新治療に至るまで、広範囲のお話でした。

潰瘍性大腸炎は寛解と増悪を繰り返す難病ですが、適切な治療を行うことにより、再発率が下がり、手術を要する例は激減しています。

適正な初期治療により粘膜治癒を達成し、さらに適正な治療の継続により寛解が維持できます。

メサラジン製剤は従来のペンタサ、アサコールに加えて、リアルダが登場しました。

ペンタサは時間依存性で小腸から大腸まで広範囲に薬剤の分布がはかられます。
アサコールはpH依存性で大腸に高濃度の薬剤を分布させるデリバリーの異なる薬剤です。
いずれも高濃度のメサラジンを大腸に分布させるための工夫がなされています。

リアルダはこの両者の特性をあわせもったもので、薬剤を大腸に運んでから、徐々に大腸全体へ高濃度のメサラジンを分布させることができます。

しかも増悪時は4800㎎の高容量での投与が可能、1日1回の内服で有効などメリットが大きく、効果の面でも他の2剤をしのいでいます。(最大量はペンタサは4000mg、アサコールは3600mg)

しかしながら、薬剤が大きいのが弱点で飲みにくいかもしれません。
冷所保存ということになっておりますが、極端な高温でない限り問題はないとのことでした。

免疫調整薬のイムランは1%に白血球が減少する副作用がありますが、25㎎からの少量から開始して、2週間ごとの血液検査を行いつつ50-100mgまで増量していけば、安全・有効に使用可能です。
イムランの副作用には遺伝子の変異が関与することがわかってます。

バイオ製剤としてはレミケード、ヒュムラに加えて、シンポニーが加わりました。

リンパ球の消化管細胞への浸潤を抑制するベドリズマブも大変効果が期待できます。

その他にも新薬が開発中でますます治療の選択肢が広がっていくものと期待されます。

妊娠・出産・授乳についてのデスカッションもおこなわれましたが、適正な治療が優先され、服薬したままの妊娠・出産・授乳は
大きな問題にはならないとのお話でした。
念のためイムランは妊娠24週までは休薬する方針とのことですが、継続している専門医も多くおられます。


2017/6/7  SKY消化管研究会講演会 湘南クリスタルホテルにて




 
 


DPP-4阻害薬の特性について考える


DPP-4阻害薬は 本邦の糖尿病患者さんの70%に処方されており、第一選択薬としての地位を確立しています。今回、ご紹介するトラゼンタを初めとして、テネリア、ネシーナ、ジャヌビア(グラクティブ)、エクア、スイニー、ザファテック、マリゼブなどがあります。

いずれの薬剤も食後の高血糖を抑える、血糖変動を抑える、単剤では低血糖をきたすことがない、多剤との併用がしやすい、副作用がほとんどなく安全性が極めて高い、特に日本人には効きやすいなど素晴らしい特性を有しています。

これらの薬剤は1日2回内服、1日1回内服、週に1回内服など利便性において差があります。

また、腎機能障害がある場合、肝機能障害がある場合に使用しにくい、いわゆる慎重投与、透析患者さんにおける禁忌など使用上の制限が異なります。

トラゼンタは肝腎での代謝経路が存在するため、これらの制限がない点で利便性が高いといえます。

これらの薬剤において治療効果や安全性の面において差があるのでしょうか?

食後血糖の低下作用、HbA1cの低下作用、安全性の面で差がないことが、様々な研究から明らかとなってきました。長期的な心血管病の抑制についても差はないとのことです。

次の演題はアクタキサンチンに関するものでした。アクタキサンチンは鮭の赤い身やエビの殻などに多く含まれており、ビタミンEの500倍の抗酸化作用があるといわれています。抗酸化作用とは簡単に言うといろいろなストレスから細胞を守り、動脈硬化や老化を防ぐ作用と理解していただくとよいと思います。

トラゼンタの基本構造がキサンチン骨格を有するため、抗酸化作用について優れているのではないかとの研究がなされています。

特にマクロファージという白血球による炎症を抑制する、GLP-1を上昇させる、血中・脂肪組織・肝臓においてDPP-4活性を抑制することにより、炎症を抑えインスリン抵抗性を改善すると分かってきました。

近年、関心が高まっている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の炎症・線維化を抑制し、肝硬変への移行や肝細胞がんの発症抑制にも寄与する可能性があります。

糖尿病とNASHは併発することが多いので、一石二鳥の有効な薬剤といえます。

高齢者では潜在的に腎機能が低下していることも多いので、高齢者にもトラゼンタは使用しやすい薬剤です。

肝機能・腎機能を気にすることなく、同じ容量で投与可能なトラゼンタは、高齢者の糖尿病が激増している本邦において今後、大きな役割を果たすであろうと期待されます。

上記の情報は前半は北海道大学の中村昭伸先生、後半は金沢大学の太田嗣人先生によるものです。

2017/6/4  ヒルトン東京お台場にて



 
 


高齢者心不全診療を考える  何を診てどう考えるべきか
日本医科大学  佐藤 直樹 先生


超高齢化社会を迎え高齢者の心不全が急増しています。
心不全の予後は極めて不良であり、再発・再入院を繰り返します。
もちろん死因としても大きなウエイトをしめています。

心不全の診療にあたり覚えておくべきこと8項目が示されました。
1、心不全の予後は極めて不良
2、高血圧の管理が重要
3、心筋梗塞後の適正な心筋保護が必要
4、心不全にはさまざまな原因がある(血管・心筋・心膜・伝道系など)
5、隠れ心不全に注意(息切れ、だるさ、むくみなど)
6、心不全には段階があり、早期診断と適正治療が重要
7、もしつらくなってきたら、時間との勝負になる(急激に重症化する)
8、適正治療(減塩・リハビリ・ADLの維持・適正な薬剤の選択と継続)

そして、将来の悪化について予測と告知を行い、ケアプランについてきちんと話し合うことが重要とのお話でした。

2017/6/1 Premium Conference in Yokohama  ホテルニューグランドにて