漢方薬コーナー

 

フレイルに効く『人参養栄湯』
  
人参養栄湯には血をめぐらせ潤す、気をめぐらせ温める、気を補い胃腸機能を高める、元気にする、皮膚を強くする、止咳・去痰作用などがあり、病後などで体力が衰えた方の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血などに効果があります。
特にアルツハイマー型認知症で元気がなくなり食欲が低下している方の食欲増進に効果があったとされています。

 

◆にきびに漢方治療◆三種の神器◆漢方って本当に効くの? ◆胃もたれ、胸のつかえる方へ◆漢方セミナーに参加

◆にきびに漢方治療

 私には中学生の甥っ子がいて、時々、食事をごちそうするのですが、何がいいと聞くとかならず、焼き肉です。何と4-5人前をぺろりとたいらげます。その甥っ子はひどいニキビ面だったのですが、最近はすっかりきれいになっていました。医師である私は興味があるのですぐに聞いていました。『最近きれいになったな、なんかしたのか?』『漢方薬を飲んでよくなったんですよ。普通の医者にかかってもダメだったんで・・』『漢方か!何が効いたんだ?』『×○□△?・・、忘れちゃった!』というわけで処方の内容は聞けなかったのですが、中学生でも医師の指示通りキチンと漢方薬を飲んでいたのです。
 ニキビにはスキンケアも重要ですが、体の内部から治すという考えもあります。便秘など胃腸の調子が悪い方には胃腸に作用のある漢方を用いたり、生理痛のひどい人には、生理を整えることでニキビが治ることもあります。
 ニキビの診察で排便習慣や生理についても聞かれたり、舌や口の中を診られたり、おなかを触られたりしたら、その先生はかなり詳しいといえます。
 具体的には清上防風湯、桂枝茯苓丸、荊芥連翹湯などがよく用いられます。
 漢方薬の勉強は各薬剤が何に効くのか、各成分にどのような効果があるのか、症状ごとにどのような漢方薬が効くのか、その選択の根拠は(証といいます)など、立体的に行わなければならず、とにかく種類が多いのと漢字が難しいことで、これは本当に大変です。
 漢方ブームということもあり、患者さんの方が詳しいことがあったりしますね。
 

◆三種の神器
  
 私は西洋薬のみでなく、漢方薬による治療も行っておりますが、問題なのはその種類の多さと似通った名前のためなかなか覚えられないことです。その中で、『この症状にはこの薬が効く!』という、定番の薬を3種類ずつ用意しています。私にとっては三種の神器です。
 
胃腸症状で胸やけ、もたれの方には半夏寫心湯がよく効きます。半夏寫心湯は口内炎にもよく効きます。
 
喉から胸がつかえた感じがするという方もよくおられます。この場合は半夏厚朴湯です。
 
胃腸炎による吐き気には五苓散が定番です。一気に飲ませると吐いてしまうので、少量ずつちびりちびりと飲んでいただくのがコツです。五苓散は小児の胃腸炎にもよくつかわれます。その場合は量を少なめに処方いたします。五苓散は二日酔いにもいいんですよ。

上記以外にも症状ごとに3種の神器がたくさん私の引き出しにはいっています。お決まりの西洋薬にてなかなか症状がとれない方には、一度、漢方治療を受けられることをお勧めいたします。こんなによく効くのかとびっくりしますよ。
 

◆漢方って本当に効くの?
 

 帝京大学準教授の新見正則先生の漢方セミナーに参加してまいりました。演題名は上記のごとくです。新見先生は血管外科の専門医で漢方医学など鼻から信用していなかったのですが、ある日のこと漢方治療に目覚めてからは、その素晴らしさにとりつかれてしまったとのことです。

 新見先生のすごいところは漢方薬の効果についてきちんと研究をされていることです。

 ネズミで心臓移植を行うとほとんどが数日で死亡してしまうのですが、柴苓湯を与えると100日以上も生存しているとのことです。柴苓湯は12種類の生薬からなるのですが、このいずれを欠いても効果がなかったとのことで、この12種類の組み合わせが欠かせないのだということでした。

 漢方薬は生薬の組合せによるものなのですが、長年の経験と知恵から築かれた処方であり、足しても引いてもいけないということがわかりました。その中で病状によっては相性の良い組み合わせも存在します。

 ご自身は大柴胡湯と桂枝茯苓丸を長期に服用され、減量に成功し、血圧が下がり、痔が治り、髪の毛が生えてきたとのことでした。

 ご専門である下肢の静脈瘤や血栓症にも桂枝茯苓丸がよく効くとのことです。下肢の浮腫には柴苓湯がよく効きます。

 芍薬甘草湯はこむらがえりの特効薬ですが、胃痛、尿路結石、ぎっくり腰、生理痛など内臓の収縮に伴う痛みにもよく効きます。

 妊婦にも安全につかえ、西洋薬との併用も問題ありません。

 空腹時にお湯に溶かしてお茶代わりに気楽に飲んでいただくことがよく利かすコツです。

 漢方医学の良いところは、診断名に対して治療を行うのではなく、症状に対して処方を選択していくということで、選択肢が多いのです。これまでは検査で異常がないとどうすることもできないので、患者さんにはもう来てもしょうがないよというようなあしらいをしていたとのことですが、現在では『どこが悪いの?』ときちんと患者さんと向き合ってあげられるようになったとのことです。東海大の新井信先生もおっしゃっておりましたが、患者さんときちんと向き合うことが楽しくなってくるというのが、漢方医学の大きな魅力です。
 

◆胃もたれ、胸のつかえる方へ 

 胃もたれ、胸のつかえ感を訴えて受診される方が多数おられます。最近はやりの病気で逆流性食道炎という疾患がありますが、その場合は胸やけが主症状となります。内視鏡検査を行っても異常なく、胃酸を強力におさえるPPIやH2ブロッカーというたぐいの薬を処方してもなかなか良くなりません。このような症状を『機能性胃腸症』といい難治性のことが多いのです。

 私はこのような患者さんで、わりと元気な方には半夏寫心湯を処方します。元気のない方には六君子湯です。これは本当によく効きます。漢方薬は空腹時投与ということになっており、面倒くさいとお感じになる方も多いですが、熱いお湯に溶かしてお茶代わりに10時、3時などの休憩時間にお飲みいただくとよいと思います。まずはお気軽にお試しください。2週間服用してみてこれはいいと思われる方には継続して処方いたします。お困りの方はご相談ください。
 

◆漢方セミナーに参加

 東海大学東洋医学講座の新井信先生による漢方入門セミナーに参加してまいりました。

 2回の休憩を挟みながら6時間におよぶ講義でしたが、新井先生はこんなにも漢方は楽しい、理論がわかればうまく治療ができて、よく効くので患者さんにも喜ばれると、漢方治療の極意を大変わかりやすく解説してくれました。

 とにかく新井先生ご自身が漢方大好き、楽しくて仕方がないという方でして、こんな先生に学べて東海大の学生は恵まれているなあと思っていたら、その場で聴講生になりたいと新井先生に入門する精神科の先生もおられました。

 その極意の一部をご紹介しますと、まず『実証』と『虚証』を理解せよとのことです。がっちりとした体格で、疲れを知らない、早食いで、精気に満ちた状態を実証、痩せていて、食べると眠くなる、冷たいもので下痢をするなど、虚弱な感じを虚証といいます。実証と虚証により使用する薬が異なります。

 あまりいろいろな薬をためさずに、少ない種類の薬で経験を重ねて、得意な処方を身につける。そのためには、症状のパターンにより使用する薬を決めておくとよいとのことでした。

 私はもともと漢方治療には興味を持っており、いくつかの得意な処方がありますが、このたび新井先生よりてきめんに効く処方について伝授されました。西洋薬ではなかなかうまくいかないという方には、漢方薬の処方も可能ですので、ご相談ください。

 ここでは一部しかご紹介できませんが、虚弱で食欲がない、胃が持たれるという方には六君子湯。ガスがたまり、便秘がひどいという方には大建中湯。肝硬変で足がつるという方には芍薬甘草湯。過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯。胃腸炎には五苓散。元気がない、気力がないときは補中益気湯。腰痛、頻尿には八味地黄丸。更年期障害でのぼせなど愁訴の多い女性には加味逍遥散。月経痛には当帰芍薬散。攻撃的な性格、疳の虫、チックには抑肝散などなどです。抑肝散については心療内科の師匠である井出広幸先生にも境界型パーソナリティー障害で攻撃的な人によく効くと教えていただいておりました。